亀山、と聞いたら何を思い浮かべるであろうか。やっぱり、あの1992年、亀新フィーバーを巻き起こした亀山努に違いない。怪我をも恐れぬハッスルプレー、ヘッドスライディング。懐かしい……。
などと言い出すのは、現実的には阪神ファンくらいなものだろう。亀山、かめやま、カメヤマ。何が思い浮かぶかというと、そうである。あの一世を風靡したシャープの液晶テレビ「世界の亀山モデル」だ。
2000年代の前半、まだ薄型テレビが世に出始めて間もない頃に登場した「世界の亀山モデル」は、まさに薄型テレビの代名詞になった。亀山努ほどではないにせよだいぶ懐かしい話だが、こちらはさすがに記憶に残っている人も多いのではないかと思う。
「世界の亀山」の亀山は名古屋から約1時間
で、この「世界の亀山」の亀山とは何なのか。それはシャープの亀山工場で生産されたことによるものだ。亀山工場があるのは三重県亀山市。2004年に三重の山中に生まれた巨大工場がその生産の拠点であった。今回の主役は、「世界の亀山モデル」を生んだ亀山の街、亀山駅である。
亀山駅なんて知らねえよ、亀山努よりも知らねえよ、というお声も聞こえてきそうだが、亀山駅はれっきとした(というのも変ですが)ナゾの終着駅である。愛知県の大ターミナル・名古屋駅から関西本線の快速に乗ってちょうど1時間。日中には1時間に1本と本数は少ないが、朝や夕方以降にはちょっと亀山行きの電車も増える。
途中にはハマグリでおなじみ桑名やトンテキが旨い四日市があり、これら三重県を代表する都市を経て鈴鹿山脈の山地へとちょっとだけ分け入ったその入り口のような場所にあるのが亀山駅だ。だから三重方面から名古屋へ通勤している皆様にとって、亀山駅ってどんなところだろうね、とほんのり疑問を抱いているに違いない。
そんなわけで関西本線の快速電車に揺られて1時間、亀山駅までやってきた。毎度のことだが、1時間も電車に乗るというのは大変な気もするが、東京をはじめとする大都市ではその程度の通勤時間はざら。つまり亀山は“座って通勤できる名古屋のベッドタウン”と言えなくもないのである。