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 1回戦2回戦でやったゴルフのネタはせいぜい延ばせても3分尺がちょうどいい短尺のコントだったので、新しいのを作るしかないかと思いましたが、準々決勝の日程もわりとすぐに迫っていたので、ライブでかけれる時間もなく、どうしようと頭を抱えたときに思い出しました。ライブにかけたことあるコントで5分のコント。

 あれだ。

 都築がくるみ割り人形になって出てきたクルミを拳で叩き潰すコントがちょうど5分位だったのです。

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 僕はそのコントがこの時を待っていたように感じました。

 都築と石橋に言いました。準々決勝はくるみ割り人形のネタでどうだろうか。

 2人も、「たしかに。あれは最初にライブでやったネタで思い出もあるしな」。ということで、満場一致でくるみ割り人形で行くことになりました。

会場は静寂に包まれたまま5分が過ぎた

 当日の朝にネタ合わせを終えて、これはいけるぞと気合を入れ、いざ本番、僕が板付きで始まります。

 そこに現れる石橋、「くるみ割り人形を買ってきたから今から持ってくるね」。

 一度ハケる石橋。そして石橋に手を引かれて出てくるのは人形のように感情を無くした都築。

 のはずだったのですが、出てきたのは手も足もガクブルの都築でした。そういうコントかってくらい震えていました。

 いや人間じゃん。という僕のツッコミがその震えに妙な意味を与えます。

 都築は緊張に弱い。しかしここまでとは。

 まぁ大丈夫だ。クルミを都築の前に置いて都築がそれを叩き割った衝撃で、きっとお客さんも笑うだろう、と期待を込めて都築の前にクルミを置きました。

 震えた都築の拳は、クルミをよけて机を思いっきりぶっ叩きました。

 お笑いライブかってくらい静寂に包まれる会場。その静寂のまま5分がすぎました。

©iStock.com

 しかしガクブルしなかったらウケてたかと言われるとそんなこともありません。シンプルにネタもスベっていましたが、くるみ割り人形くんが震えてくれたおかげで、僕は精一杯都築のせいにできてラッキーだなと思いました。

 それを最後にキングオブコントには出ていません。

 誠心誠意コントに打ち込みいいコントができたら、出場させていただきたいと思います。

これこそが後藤

後藤 拓実

講談社

2021年9月8日 発売