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《寝屋川市中1男女殺害》「呪うことだけ考えて吊られて逝く」「復讐だ」山田被告が自ら“死刑”を選んだ本当の理由

《寝屋川市中1男女殺害》「呪うことだけ考えて吊られて逝く」「復讐だ」山田被告が自ら“死刑”を選んだ本当の理由

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 2019年5月19日の控訴取下げの理由は、極めて些細な出来事だったようだ。

 ある日、山田被告がボールペンを拘置所職員に返却する際に、職員へ乱暴な言葉遣いをしたことを違反行為として指摘される。外部との文通や面会を制限されそうになったことで《被告は自暴自棄となり、同夜のうちに控訴の取下げに及んだ》とされている。

 弁護側も慌てたことだろう。速やかに控訴の取下げを無効にするよう動き出す。その主張は被告の精神状態を理由にするもので、《精神障害および死刑判決という特殊な精神状況により自己の権利を守る能力を著しく制限されていた》としている。

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「大阪高裁は弁護人の主張を退けつつも、結局この時は控訴取下げを無効にする決断を下しました。死刑確定という重大な結果をもたらす決断にしては、動機があまりにも軽率だという理由でした。自分が死刑判決をしっかり受け止めた判断とは思えない、ということです。もちろん、検察側はこれを不服として審理を差し戻す主張をしました」(前出・全国紙社会部記者)

山田浩二被告が粘着テープを購入したコンビニ。購入直後に車で星野凌斗君の遺棄現場に向かったとみられる  ©共同通信

 この控訴取下げが有効か否か、審理を継続しているさなか、なんと被告は2020年3月24日に再び控訴取下げの申請を提出する。2度目の控訴取下げを申請した直後、山田被告に面会した司法記者はこう振り返る。

「拘置所内での“いじめ”」の事態とは

「被告はこちらの目をずっと見つめながら話すので、ちょっと異様な雰囲気でした。こちらの聞きたい事には一切答えず、自分のしゃべりたいことを一方的に話していました。控訴取下げについては『弁護士にすべて任せている』などと言って、一切話そうとしませんでした。ただし、拘置所内での“いじめ”について書いてくれと言われました。職員が部屋に入って私物を荒らされたと主張していました」

 拘置所職員が山田被告の私物を調査したことは、《決定文》にも記されている。

《決定文》によると、職員は山田被告の私物を荒らしたのではなく、6日前に被告に貸与していた願箋(被収容者が面会や買い物を申し出る際に使う紙)が返却されていなかったことが理由で、3月24日に私物を調査したとされている。

 この私物調査に当たっては、拘置所職員が3月19日に被告の身体検査と居室への立ち入り捜査をしたものの、願箋は発見されなかったという経緯がある。被告は「身に覚えのないことだ」と主張していたがその通りの結果になったのだ。しかし、それでも被告の隠匿疑惑は晴れなかったのだろう。職員は3月24日にさらに詳細な調査をすると山田被告に通達した。

 そしてこの通達からわずか数分後、被告は自分の部屋のインターホンを押して拘置所職員を呼び、控訴を取下げたいと伝えたという。