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《寝屋川市中1男女殺害》「呪うことだけ考えて吊られて逝く」「復讐だ」山田被告が自ら“死刑”を選んだ本当の理由

《寝屋川市中1男女殺害》「呪うことだけ考えて吊られて逝く」「復讐だ」山田被告が自ら“死刑”を選んだ本当の理由

genre : ニュース, 社会

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 同時期、山田被告は自身の通信制限についても不満を表していたという。被告は自分と同じく拘置所に収監されている複数人と、差し入れやはがきでコミュニケーションを取っていた。それを拘置所内の秩序を乱すと考えた拘置所側が規制すると、被告は不当ないじめ・嫌がらせだと主張した。

 不満が鬱積していく中、被告は《処刑場まで書信係職員を呪うことだけ考えて吊られて逝く》などと、冒頭で紹介した弁護人へのはがきを書いたのだ。それは拘置所職員が被告の居室に立ち入り調査をした3月19日のことである。自分の意に沿わないことがあると、すぐに控訴取下げという“復讐”に飛躍する被告の感情的な思考回路が見て取れる。当然、はがきを受け取った弁護人はすぐに山田被告への面会を申し出るが、被告は面会を拒否している。

《決定文》には、被告が書いた控訴取下げ書の内容についても記載がある。その控訴取下げ書は書式を完全に無視して書かれており、被告が感情的になっていた様子がうかがえる。

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 どの事件に対する控訴かを記入する欄には《これ以上の大阪拘置所の嫌がらせ、いじめ、言い掛かりに耐えられないので》とあり、記入日欄の下には《訳の判らぬことで調査にさせられた日》などと書かれていた。この取下げ書を見た職員が記載の不備を伝えるも、被告は「このままでいい」と言い修正に応じなかったという。

午後には一転「さっきの控訴取下げやめられませんか」

 しかし同日午後、被告は弁護人と面会。そして面会直後、拘置所職員を呼びつけて、「弁護士と話して。やっぱりさっきの控訴取下げやめられませんか」と申し出た。しかし「取下げ書は職員が受け取った時点で効力を発揮してしまう」と言われ、その場での取下げ撤回は受け入れられなかったという。

「弁護側は1回目の控訴取下げの時と同様に、今回の控訴取下げについても無効であることを主張しました。しかし、大阪高裁は今度は控訴取下げを決定。弁護側の異議申し立てで控訴取下げが有効であるか否かについて最高裁までもつれ込みましたが、2021年8月25日、この異議申し立てが否決され、一審の死刑判決が確定したのです」(前出・全国紙記者)

©️時事通信社

 高裁も弁護人の尽力に同情したのか、被告の言動が目に余ったのか、取下げの決定文に次のような一文を加えている。

《極めて重要な本件取下げに及んだのに、その僅か数時間後に早くも後悔して大騒ぎをし、弁護人は一度ならず二度までもそのような事態に対処するために、職責とはいえ大きな労苦を強いられたといえる》

 山田被告の突発的な行動に翻弄されたのは弁護士や裁判所だけではない。事件の真相が解明されることのないまま、突然の幕引きとなった寝屋川中学生男女殺人事件。被害者遺族の心痛は計り知れない。

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