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判決後の視線
判決が言い渡されると、裁判長は控訴の説明をした。
裁判長:判決に不服があれば控訴できます。14日以内に必要書類をこの裁判所に出してください。
北井被告の返事は聞こえなかった。この日、自らの名前を名乗るほか、北井被告が声を発することはなかった。判決後、北井被告は再度こちらに目をやる。その顔に、表情はなかったが、こちらに向けられた鋭い目の奥に何かがあった。
赤ちゃんへの「謝罪」 裁判官・裁判員への「感謝」
北井被告は、前回の裁判の最終意見陳述で、裁判官と裁判員たちに向かって、こぼれ落ちる涙を拭いながら、こう語りかけていた。
北井被告:本当に赤ちゃんに対して申し訳ない気持ちでいっぱいですし、これからは自分のしたこととしっかりと向き合って生きていこうと思っています。そして、家族と話し合う時間を大切にして、何よりも命の大切さについて、しっかりと話し合っていきたいと思います。
北井被告:裁判員裁判ということで、裁判員の方々と裁判官の方々、自分たちの時間を私のために当ててくれて、まったく知らない赤の他人の私の話を最後まで聞いてくれて、質問の時も、私にいろいろ質問してくださって、皆さん一人ひとり、私と向き合ってくださって、本当にみなさんには感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
しかし「感謝」と「謝罪」の言葉はどこか空虚にも感じた。その思いを胸に秘め臨んだであろう、24日の判決。北井被告には裁判長の言葉がどのように届いたのか。北井被告は即日控訴した。
(フジテレビ社会部・司法担当 根岸竜)
(イラストは法廷画家・大橋由美子)