入国から4日目に発見
彼女がこの2人をはっきり覚えていたのには、もう1つ理由がある。彼らを迎えにきた人物と会話を交わしていたのだ。
「彼らがゲートから出てくる前、座っていたベンチの隣に水商売風の女性がいて、同じ中国人だったので話をした。女性は横浜に住んでいて、親戚を迎えにきたと言った。その親戚というのがあの2人だった」
彼らの身辺を調べると、確かに横浜に親戚がいた。すぐに捜査員が現地に飛んだ。
「張り込みを始めると、彼らは本当にそこにいた」
家から出てきた2人は、駅近くの携帯電話の代理店に入った。しばらくして携帯電話を手に出てきたところを、捜査員が声をかけた。親戚の女性が2人分の携帯電話を契約し、その電話を受取りに行ったのだという。入国から4日目のことだった。
家族の遺体に執着しない外国人は少なくない
警察に連行された父親は「警察はなんで息子を殺したんだ」と非難し続けた。ところが、捜査員が「息子さんの遺品をお返しします」と、息子のポケットにあった1万円札数枚を目の前に差し出すと、父親はぱっと手を伸ばして、そのお札をむしり取ったという。
「息子の遺体は放っておいても、目の前の金は大事ということなのか。遺体にすがって泣いたのは1時間ほど、あとはケロリとしたもので、魂のない身体に特別な感情はなかったのだろう」と捜査員は話す。警察は遺体を火葬してお骨を持たせ、2人を帰国させた。“死んだ者より生きている者”、日本の文化とは異なり、外国人は家族の遺体に執着しないことが少なくないと捜査関係者は言う。
これ以降、警察では、外国人犯罪において家族親族を招聘する場合、来日する家族親族の行動を入国から帰国までの間、確認することになったという。