ドラフト直前に急浮上した速球派サイドハンド
もし森木が重複1位指名となり、くじを外してしまった場合はどうすべきか。達孝太(天理)、山下輝(法政大)、廣畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ)、山田龍聖(JR東日本)あたりが残っていれば、外れ1位候補になるだろう。
問題は2位に指名する投手だ。1位で高校生を指名するなら2位で即戦力、1位で即戦力に近い投手を指名するなら2位で素材型を求めたい。
現在セ・リーグ3位である巨人のウェーバー順は7番。つまり、巨人の2位指名はドラフト会議全体で19番目になる。残っていそうな存在のなかから、即戦力型と素材型をそれぞれピックアップしてみよう。
まず即戦力型なら、赤星優志(日本大)、椋木蓮(東北福祉大)、黒原拓未(関西学院大)、森翔平(三菱重工West)といった投手が候補になる。鈴木勇斗(創価大)も2位で残っていれば大儲けの速球派左腕だ。
そんな有望投手がいるなか、思い切って推したいのは岡留英貴(亜細亜大)である。
岡留は今秋、ドラフト上位戦線に滑り込みをかけてきた、評価急騰中のサイド右腕。最速150キロの高めに勢いよく吹き上げるようなストレートが印象的な速球派だ。ドラフトイヤーの今年は春のリーグ戦で結果を残せなかったものの、感覚をつかんだ秋のリーグ戦でブレーク中。別人と思えるほどコントロールが向上し、ストレートも変化球も抜群の精度を誇る。ドラフトに向けて急激な上昇カーブを描いている。
今季の巨人リリーフ陣は「マシンガン継投」のせいか、各投手に疲労の濃さを感じさせた。右のリリーフは外国人選手頼みという側面もあり、タイプ的に希少でリリーフ適性の高い岡留は有力な候補になる。
余談ながら、亜細亜大といえば昨年のドラフト1位・平内龍太が今季は結果を残せなかった点を危惧する向きもあるだろう。とはいえ、昨秋に突如ドラフト上位戦線に急浮上した平内の剛速球は鮮烈だった。1位指名にふさわしい大器だけに、もう少し長い目で見守ってほしい。
素材型の2位指名候補は、石田隼都(東海大相模)、木村大成(北海)、畔柳享丞(中京大中京)、市川祐(関東一)あたりが候補になりそう。原監督にとっては母校の後輩である石田は、春のセンバツ優勝で実証したように大舞台でもマイペースで投げられる特性を持つ。人気球団でこそ存在感が際立ちそうだ。
「オール3」ではなく「突出した5」を求めるドラフトへ
今年のドラフトで巨人は支配下6名、育成選手10名程度の指名を予定しているという。かつては弱点が少なく「オール3」の選手を集めていた巨人のドラフトが、原監督が就任した2018年秋以降、明らかに変わってきている。多少の弱点に目をつぶり、突出した「5」を持っている選手を積極的に獲得するようになった。
そのため、育成選手を含めて近年のドラフトで獲得した楽しみな若手が多い。いずれ大輪の花を咲かせるかもしれない新芽を、今は3軍から着々と育てている。前述した「我慢と投資」の投資とはこの部分だ。
今年も3位以下で意欲的な一芸型の選手獲得を目指してほしい。フルスイングなら梶原昂希(神奈川大)。パワーなら鵜飼航丞(駒澤大)。スピードなら丸山和郁(明治大)や藤野恵音(戸畑)。二塁送球なら大友宗(帝京大)。外野からのレーザービームなら仲田慶介(福岡大)。投手としての将来性なら黒田将矢(八戸工大一)や京本眞(明豊)。底知れないスケールなら羽田慎之介(八王子)もいる。
10月11日は、戦力補強をするだけの日ではない。「こうして我々は未来の巨人を作っていく――」と、球団がファンに向けて高らかに宣言する日でもあるのだ。
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