昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

ギャル男だった僕に勇気をくれた坂本勇人…純烈・後上翔太は巨人に救われた

文春野球コラム ペナントレース2021

現実を直視しない本能

 みなさん、はじめまして。ムード歌謡コーラスグループ・純烈の後上翔太です。

 お陰さまで純烈は2018年に目標としていた紅白歌合戦に出演させていただいて以来、3年連続で紅白に選んでいただけるグループになりました。

 売れない時代が長かったせいか、僕はなるべく先のことは考えないようにしています。悩んで、嘆いて事態が好転するならいいでしょう。でも、どうにもならないことで悩むのは時間のムダですし、それなら寝ていたほうがマシです。もちろん、仕事は遊びではないので責任は伴いますが、重圧に押し潰されたら終わり。だから僕の体は常に「現実を直視しない本能」が搭載されているようです。

 そのような考え方だからか、テレビやライブなどの大きな仕事が入っても、気負うことなくいつも平常心でいられます。そんな僕の日常で唯一、喜怒哀楽が解放されるのが巨人なんです。

 仕事先でも時間ができれば速報をチェックして、可能な限りDAZNでテレビ中継を見ています。プロ野球死亡遊戯こと中溝康隆さんのコラムも、ブログ時代から愛読していました。巨人が勝てばうれしく、負ければ悔しい。無責任な一ファンとして、巨人の動向に一喜一憂しています。

 僕は小学1年生だった1993年、長嶋茂雄さんが監督復帰し、松井秀喜さんが入団した年から巨人ファンになりました。翌年に初めて球場に行った時のオーダーは「1番・グラッデン、2番・川相、3番・松井、4番・落合、5番・吉村……」とすぐに思い出せます。いつしか、僕のなかで巨人が生活の一部になっていました。

鍵谷→大江→大竹→高梨→中川の継投勝利で5投手がお立ち台に上った2020年7月31日の広島戦 ©後上翔太(純烈)

ギャル男だった自分を巨人に引き戻してくれた坂本勇人

 大学生の頃、ギャル男をして遊び歩いていた時期があります。それまでは娯楽といえばテレビだったのが、周りの世界が広がり、逆にテレビを見る時間が減りました。その時期は巨人のテレビ中継からも離れてしまい、情報に疎くなっていました。

 2007年9月6日、僕は久しぶりに巨人戦のテレビ中継を見ていました。中日との首位攻防戦は1対1で延長戦に突入。12回表に満塁のチャンスを迎えた巨人は、代打に高校を出たばかりのルーキーを起用しました。

 自分より年下の、ひょろひょろの新人がこんな大事な場面で使われるのかと驚きました。その右打者がバットを振り抜いた瞬間、明らかに詰まった打球に「ダメじゃん……」と落胆しかけました。ところが、打球はショート後方にポトリと落ち、決勝の2点タイムリーになったのです。

「なんかすごいな、このルーキー。運があるなぁ……」

 この新人こそ、坂本勇人選手でした。今や3000本安打を狙えるペースでヒットを重ねる坂本選手の、プロ初ヒットでした。翌2008年の大逆転優勝劇「メークレジェンド」もあり、気づいたら僕のなかで巨人熱が再燃していました。ギャル男を卒業して純烈として活動するようになってからも、坂本選手のプレーに何度勇気をもらえたかわかりません。

坂本勇人 ©文藝春秋