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2017/11/15

genre : エンタメ, 読書

CTBだけが心の支えだった

『キャプテンサンダーボルト 下』(阿部和重 伊坂幸太郎 著)

阿部 CTBを書いていたのは2011年から2014年あたり。お互いにたいへんな時期でしたね。

 伊坂さんは仙台で震災に遭い、僕も結婚して子どもが生まれた。それぞれの人生が変化している時期で、ときにはこの作品にすがるようにして生きていた。

伊坂 震災後、僕はもう小説を書けないという気分になったりしていて、でも、CTBだけはやろうと思って、これを完成させることが心の支えになっていたんですよね。だから書き終えたら燃え尽きちゃって、今もまだ半ばリハビリ中なんですけど。  

 企画ものだから楽しんでやれた、というようなノリでは全くないんですよね。二人でなら本当におもしろいもの、完璧なエンタメ小説ができるんじゃないかと思ったし、そこを本気で目指しました。だから、二人の作家がいっしょに書いたという事実ばかりが注目されると、ちょっとさびしい。それよりも、合作の末に出来上がった作品が大事で、下駄を履かせずふつうに読んでもらって、おもしろいじゃん! と思ってもらえたらいい。

阿部 単行本を出したときには合作のインパクトが強かったかもしれないけれど、今回の文庫化を機に、作品にまっすぐ向かっていただけることも増えるのでは。みなさんが物語としてのおもしろさを読み解いてくださるのではという期待が今は強くあります。  

 よりおもしろくしたいと願って、改稿作業もみっちりしましたからね。内容的には、一ヶ所だけ書き換えたところがあります。

伊坂 終盤のシーンのごく一部ですが。全体の流れはまったく変わらないので限定的なことだと思ったんですが、書き直すの、かなりたいへんでしたね。

阿部 そう、描写もセリフも、少しでも変えてしまうと、たちまち前後に影響が出てしまう。それだけ緻密に構成された作品なんだと言えると思います。

伊坂 文庫は上下巻で、それぞれの巻末に「ボーナストラック」も収めてあります。

阿部 プロットはいっしょにつくり、二人が一つずつ持ち帰って書いたもの。相手の原稿の書き直しはしなかったので、本編との違いもまた味わえるんじゃないかと思いますのでお楽しみに。

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