東京地検特捜部が目下、捜査を進める日本最大のマンモス校、日本大学を巡る背任事件。捜査の手は、最高権力者である田中英寿理事長(74)に及んでおり、すでに特捜部は田中氏の自宅を家宅捜索し、田中本人の任意の事情聴取まで行っている。
長年にわたり日本大学の疑惑を取材するジャーナリストの西崎伸彦氏が、事情聴取の核心部分を入手した。
特捜部が追う背任事件について検察担当記者が解説する。
「疑惑の舞台は築50年を経て、建て替えが計画されていた日大医学部附属板橋病院です。予算規模は全体で1000億円とされ、昨年、基本設計のコンペが実施されました。4社のなかから設計会社の『佐藤総合計画』が選ばれ、24億円で契約を締結。日大側は、手始めに、前払金として7億円を佐藤総合計画に支払ったのですが、このうち2億円が不正に流出し、大学に損害を与えたとみられています」
2億円はその後、大阪の医療法人「錦秀会」の籔本雅巳理事長が株主を務める医療コンサル会社に送金されたことが明らかになっている。
今回の疑惑のスキームを主導したとみられるのは、日大の理事、井ノ口忠男氏(64)。日大アメフト部の元主将である井ノ口氏はスポーツ用品の販売などを行なう「チェススポーツ」を経営している。田中氏の最側近である井ノ口氏は、大学の納入業者の選定を一手に手掛ける日大事業部の役員も兼務。事実上、日大事業部をコントロールする絶大な影響力を持つ存在だ。
「今回のスキームでは、井ノ口氏が佐藤総合計画に2億円を籔本氏側に送金するよう指示したとみられています。一方で、佐藤総合計画を日大に紹介したのは、自民党議員の元秘書(今年2月に死去)で、日大と取引のある葬儀業者を通じて田中氏に持ち込んだ。病院の建て替え計画は、田中氏が井ノ口氏に同社を繋ぎ、井ノ口氏が実務を担当する日大管財部に紹介したという流れです。特捜部はコンペそのものの正当性にも疑義を持っています」(地検関係者)
特捜部の狙いは、籔本ルートを解明したうえで、井ノ口氏を入り口に日大の最高権力者である田中氏に迫り、巨大な利権構造にメスを入れることである。