いまから60年前のきょう、1957(昭和32)年11月15日、名古屋市営地下鉄の最初の区間(現在の東山線の一部)となる名古屋~栄町(現・栄)間2.4キロが開業した。この日、午前9時から名古屋駅で竣工式に続き、発車式が行なわれ、同9時48分、当時の名古屋市長・小林橘川とその孫娘のテープカットにより最初の電車が出発した。一般営業はこのあと午後2時に始まり、初乗りを待ちわびた市民や近郊の住民がどっと押し寄せ、3分間隔で発車する電車はすべて満員となる。

 名古屋市営地下鉄の最初の電車、100形車両の塗色には、目に鮮やかなウィンザーイエロー(菜種色)が採用された。これは名古屋出身の画家・杉本健吉の選定によるもので、当初、エメラルドグリーンとあわせて候補に考えていたが、車両は地下だけでなく地上を走る構想もあったことから、ウィンザーイエローのほうが選ばれた。

「黄電」の愛称で親しまれたウィンザーイエローの車両は約40年間運行。2000年の引退式には鉄道ファンらが詰めかけた ©共同通信社

 ちなみに100形には網棚がなかった。地元出身の女優・川島なお美はかつて、地下鉄の思い出として、東京から来た知り合いに「何で(網棚が)ついてないんだ!」と怒られたという話をあげていたことがある(名古屋市交通局編・発行『ナゴヤの地下鉄 メモリアル30』)。1980年に東山線に登場した5000形車両でも、網棚はロングシートの両端の上部に申し訳程度につけられるにとどまり、同線の電車にちゃんとした網棚が取りつけられるには、1992(平成4)年に導入された5050形まで待たねばならなかった。

ADVERTISEMENT

 この間、名古屋の地下鉄は、東山線が東西に延伸されるとともに(現在は高畑~藤が丘間20.6キロを結ぶ)、新たに名城線・鶴舞線・桜通線などの路線も建設され、ネットワークを形成するようになる。2004年には名城線で、全国の地下鉄では初の環状運転が開始されている。