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5つの臓器を全摘した安藤忠雄が問う「あなたは何かに挑んでいるか」

歩みを緩めず、「挑戦」という名の個展ができるまで

2017/11/19

夢、希望、挑戦が生きていくうえで不可欠

 与えられた状況に安穏とせず、みずからハードルを高く上げて挑戦する。そんな心意気は、テラスに設置した「光の教会」からも読み取れる。

 1分の1スケールモデルを建ててしまう行為だけでも驚異だが、じつはこのモデル、1カ所だけ本物と異なる部分がある。光が差し込む十字架状のスリットに、ガラスが嵌めてあるかどうか。大阪の本物にはガラスがあり、六本木にはない。

「光の教会」にて ©飯本貴子

「施主側の要望で、本物にはガラスを入れています。教会として使ううえで、吹きさらしでは寒いし雨が降り込んでも困るというのです。でも、私は当初からガラスはいらないと思い、そう主張してきました。寒い? 雨が冷たい? だからこそ、互いに心を合わせて生きていかねばという気持ちも生じるんじゃないでしょうか。風、雨、日差し、自然とともに暮らすのが日本人の生き方であって、それを遮断してはいけないのではないか。

 機会があればガラスを外したいとずっと考えていたのですが、ようやく願いが叶いました。あきらめさえしなければ、人生なんとかなるものですね」

 建築をテーマにした展覧会はとかく模型や詳細な設計図がずらりと並び、無機的でマニアックなものになりがち。けれど今展には、そうした気配がまるでない。ものすごく生々しく、動きのある感覚がつきまとう。おそらくは展示の一つひとつから安藤忠雄というひとりの表現者の飽くなき挑戦が読み取れて、観る側に「あなたはどうか。何かに挑んでいるか」との問いが突きつけられるからだ。

「夢や希望を持ち、あきらめずに挑戦し続けるのが、生きていくうえで大切なこと。それをぜひ建築を通して体感してほしい。私はそれを建築によって示すしかできませんからね」

 夢。希望。挑戦。ふだんは照れ臭くて敬遠しがちな言葉だが、安藤忠雄さんの口からそれらが発せられると、なんとも説得力に満ちて響く。

 現在も連日大入りの会場を見渡すと、こうした直球の感情こそいま、多くの人に求められているものだと知れるのだった。

「安藤忠雄展 ―挑戦ー」(国立新美術館)は12月18日まで開催 ©飯本貴子

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