1ページ目から読む
2/3ページ目

 山本の堀北へのアプローチの仕方には、世間から「イケメンだから許される」といった声も上がった。しかし、山本はけっして自分がイケメンであるのを鼻にかけてアタックをかけたわけではないだろう。当初、「ラブレター」と報じられた40通の手紙も、のちに彼自身が明かしたところによれば、舞台で共演した彼女へのアドバイス的なものだったという(※3)。堀北も彼のルックスではなく、そんな優しさや情熱にこそ心を動かされたのではないか。

 もともと彼は大の手紙好きで、結婚する10年ほど前には《ラブレターはもらうより、書くほうが多いと思う。それこそ、君がいないとベイビー! みたいなことも書いてきましたね》と話し、恥ずかしくなったりしないのか? という問いにも《恥ずかしくないですよ》ときっぱり答えていた(※4)。

 堀北への手紙は、山本が彼女にのめり込むばかりでなく、相手のことも思いやって送られたものだったのだろう。それは彼の俳優としての姿勢とも重なる。『新選組!』出演時のインタビューでは、客に喜んでもらうためには、役になりきって感情だけで演じるのではなく、感情と表現力とのバランスが大事だと強調していた。それだけに、《後半に近づいて土方歳三という役が馴染んできたことで、かえって自然に演技ができすぎて怖い》と口にしていたほどだ(※2)。

ADVERTISEMENT

堀北真希 ©文藝春秋

 ドラマ『植木等とのぼせもん』(2017年)で往年の人気コメディアン・俳優の植木等を演じた際にも、自分を植木にどれだけ寄せて演じるのかを考え、《似せすぎるとものまねになって、あざとくなる。まったく寄せずに演じれば、今度は「植木さんじゃない」と言われる。どこを落としどころにするかは、ディレクターとも何度も議論しました》という(※5)。たしかにこのときの山本は、声などはかなり植木に似せつつも、けっしてモノマネではなく、ごく自然に演じていた。

私生活では、40歳で父親に

 山本演じる植木等は、弟子に取った小松政夫を優しく見守りながらも、ときに厳しくも接して父親のような慈愛を感じさせた。ほかの作品でも、このころから『トットちゃん!』(2017年)や『仮面ライダーゼロワン』(2019年)など父親役を演じることが増えてきた。ここには、私生活で40歳にして子供を儲けたことも少なからず影響しているのだろう。

 そのなかにあって、一昨年に放送された『抱かれたい12人の女たち』は、山本がバーのマスターに扮して、毎回、客役の1人の女優と台本なしで即興劇を演じるという異色のドラマだった。そこでは、山本ががっちりとした裸体を披露して相手をうっとりさせたかと思えば、逆に相手のペースに飲まれてたじたじになったりと、男女の駆け引きが垣間見えてスリリングだった。