「2年目のジンクス」が、今年の後半戦に突如としてやってきた
私は優勝を逃した原因を佐藤にあるなどと言うつもりはない。3月下旬に開幕し、途中でオリンピックによる中断期間があったにせよ、10月下旬まで長丁場の野球を経験したことのない、プロの世界の右も左もわからない大学出のルーキーに、責任の一端を押し付けるなどというのは、酷すぎる話だからだ。
ただし、佐藤にとっては後半戦の不振は「いい薬になった」と見ている。オープン戦から前半戦にかけて、何の苦も無く打ち続けた佐藤が、後半戦もそれまでと同様の活躍を見せていたら、「プロってこんなものか」と甘く見ていたはずだ。
けれども、後半はプロのピッチャーに手玉にとられることがそれまで以上に多くなり、「少しでも気を許したらやられてしまう」という危機感を抱いたことは間違いない。俗に言う「2年目のジンクス」が、今年の後半戦に突如としてやってきたと思えば、佐藤にとってはいい経験となったはずだ。
オフは「甘い誘い」に乗らず、不振を謙虚に受け止めよ
だからこそ佐藤にはあえて言いたい。今年のオフは、「なぜ前半戦はあれほどまでに本塁打を量産することができたのか」「なぜこれほどまでに三振を多く喫してしまったのか」「なぜ59打席連続無安打という不名誉な記録を作ってしまったのか」について、しっかり分析してさらなる技術の向上に励んでもらいたい。
シーズン中は現状からいかに脱却できるかに必死で、考える暇もなかったはずだが、オフは考える時間ができる。前半戦に好成績を残したのも、後半戦に不振にあえいだのも、同じ佐藤本人の姿である。来季は他のチームからのマークがさらにきつくなることが予想される。そうした壁を乗り越え、今年以上の成績を残すことで、佐藤はさらに進化していくことができる。
これだけ活躍したのだから、オフは甘い誘いもあるかもしれない。だが、後半戦の不振を謙虚に受け止めて、打撃を極めるつもりでいてほしい。彼は阪神のみならず、球界を代表する打者へとなるだけの素質は十分持ち合わせている。今年の成績に満足することなく、一回りも二回りも大きく成長した佐藤の姿を見たいと思っている。
(#2へつづく)