11月1日、プロ野球レギュラーシーズンの全日程が終了した。セ・リーグは前年最下位のヤクルトスワローズが“下克上優勝”を決めた一方、6月中旬には最大で2位と7ゲーム差をつけた阪神タイガースがその後“大失速”し、2位に沈んだ。なぜ阪神は16年ぶりのリーグ優勝を逃したのか。そして、来年こそ悲願を果たすために足りない要素は何なのか。野球解説者でタイガースOBの江本孟紀氏に余すことなく聞いた。(全2回の2回目/1回目を読む)
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ベンチがアホなのが阪神の伝統
今季の戦いにおいて、矢野耀大監督の采配について触れないわけにはいかないので、言わせてもらおうと思う。私は拙著『阪神タイガースぶっちゃけ話』で、あえて「ベンチがアホなのが阪神の伝統」と指摘したのだが、今シーズンの阪神にもこの“悪しき伝統”が顔を出してしまった気がする。
私は常々、「兄貴分監督」という矢野監督の姿勢には否定的だった。一般的に兄貴と弟と言えば、「兄弟仲良く支え合う」というほほえましいイメージを持たれる人もいるかもしれないが、それはあくまでも血縁関係のある兄弟間でのこと。勝負の世界においては真逆で、兄弟の絆や情を持つことほど不要なものはない。
たとえば試合に出ている選手がエラーして戻ってきたとき、タイガースのベンチ内では「まあまあしゃーないわな」「次、しっかり守っていこう」という雰囲気が見て取れる。はたしてこれが闘う集団として機能しているのかどうか、と言われれば疑問を抱かざるを得ない。
ベンチ内はライバル選手にとって争いを制する場でもある。同じポジションを守るライバルの選手がエラーをすれば、熾烈なヤジを飛ばすのは当たり前。指導しているコーチからすれば、「何べん言うたらわかるんや、アホ!」と叱責したとしてもおかしな話ではない。
ところが阪神のベンチはそうした雰囲気が欠けている。ひいてはそれが、ここ一番の勝負どころの守備で致命的なエラーを犯しているのではないだろうか。
阪神は12球団一エラーの多いチームとして知られている。今年の春季キャンプでも元巨人の川相昌弘を臨時コーチに招聘して改善を図ろうとしたが、結果としては昨年よりはエラー数が多少は減ったものの、両リーグワーストとなる失策数86を喫した。