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「エラーは恥」という意識が阪神の選手たちにどれだけあるのか

 なぜこのような結果になってしまうのか。理由は2つ考えられる。1つは、シーズンに入ってからどのくらい守備練習に時間を割いているかだ。「キャンプでは取り組みました。でもシーズンに入ったら今まで通りでした」では、単なる付け焼刃に過ぎず、長い目で見ても守備の改善や向上を図れるはずがない。

 それに「エラーをすることは、プロの選手として恥ずべきことである」という「恥の意識」が、阪神の選手たちにどれだけあるのか、甚だ疑問である。エラーしたことを謙虚に反省し、日々の努力を積み重ねていくことによって、徐々にではあるが守備力が向上し、一歩また一歩と改善されていくようになるものだ。

 私の現役時代、サードを守っていた掛布雅之は、試合前になると必ず特守を受けていた。彼は高校時代はショートを守っていたが、当時は藤田平という中心選手が守っていたため、サードを死守するためにも連日コーチから特守を受けていた。

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現役時代の掛布雅之氏(1985年) ©文藝春秋

 その練習メニューたるや、あまりにも激しかったがゆえに、「カケ、試合前なんだから、もうそのへんで止めておいてもいいやろ」と心配する声が、チームメイトから上がっていた。

 けれども、掛布は違った。「僕は投手から『アイツのところに打球が飛べば大丈夫』と言われるまでに信頼されたい。だから守備を徹底的に鍛えているんです」と言ってはばからなかった。

ここまで鍛えた掛布のエラーなら「しゃあない」と思えた

 それだけに掛布のところに打球が飛んでエラーをしても、私を含めた投手陣全員が、「まあ今回はしゃあない。次、打球が飛んで来たら頼むぞ」という気になれたものだ。

 掛布は通算349本塁打、3度の本塁打王の数字が示すように、「打撃のいい選手」というイメージをされがちだが、実は守備がすこぶるうまい。ベストナイン7度に加え、守備の名手に贈られるダイヤモンドグラブ賞(現ゴールデン・グラブ賞)を6度受賞している。だからこそ私は掛布を「守備の人」という見方をすることもある。

 翻って今の阪神の守備陣はどうだろうか。当時の掛布のように、シーズン中に守備に多くの時間を割いて取り組んでいる選手はどれだけいるのだろうか。

 12球団一のエラー数を誇る阪神の守備陣が、今季以上にエラーを減らすことができれば今より強くなることは間違いないが、現実を目の当たりにする限りだと正直、「まだまだ厳しい」と考えさせられてしまう。