日曜にぼんやりと『笑点』(日本テレビ系)を見ていると、身長差のある手品師コンビが登場し、背の低い方の相方が小道具をかぶせた頭を360度ぐるぐると回転させるマジックを披露してびっくりしたという方も多いだろう。
小道具の回転が止まっても、相方の頭がぐるぐる回ってネタバレし、笑いを獲るのがミソだった。この名奇術「あったまぐるぐる」を披露していた名コンビ・ナポレオンズのパルト小石(本名・小石至誠)さんが、去る10月26日(火)、肺炎のため亡くなった。小石さんは2019年に急性リンパ性白血病と診断され、闘病生活を送っていた。享年69歳。早逝といえよう。笑顔が素敵な方だっただけに残念でならない。
「臨時のアシスト」から始まった「ナポレオンズ」
『笑点』前半の演芸コーナーでは最多登場回数を誇り、また、そのハートフルな芸風から子供たちにも愛された。2001年4月5日~9月27日まで、毎週木曜日夕方に子供向けの優しく手品をレクチャーする番組『マジック王国』(テレビ東京系)が放送されたこともある。なお、この番組の女性MCは女優の遠藤久美子で、3人の掛け合い(?)も楽しかった。
ナポレオンズのお二人、ボナ植木(本名・植木康之)さんとパルト小石さんは、もともと専修大学の同級生。同じマジック同好会に所属していた。
金庫店を経営する父親の趣味が手品だった影響もあり、植木さんはこの頃からプロ志向だった。小石さんは同好会のマジックショーでもっぱら司会を務めており、既にこの時点でナポレオンズの原型は完成していたといえる。
手品のアシスタントといえば女性が付くのが普通だったこの当時、植木さんが募集をかけてもなかなかいい人材が見つからず、臨時のアシストとして小石さんに声をかけたことがコンビ結成のきっかけとなった。
「無理矢理引き込んだ」「彼がいなければ大成はしなかった」
当時、小石さんは訪問販売の仕事をしていたが、それが過酷だったこともあって会社を辞め、正式に植木さんのアシスタントとなった。もちろん小石さん自身が進んでしたことだったが、植木さんは“無理矢理引き込んだ”と述懐し、“小石さんがいなければ大成はしなかった”と語っている。