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「トイレまで撮りにくるの?」

――「ゆかいな仲間たち」ではムツゴロウ動物王国や自宅でのシーンも多く登場していましたが、常に撮影スタッフに囲まれていたのですか?

ムツゴロウ 牛の出産や緊急の時にカメラマンが来て、撮影をしていました。番組が始まった頃は僕もカメラを向けられることに慣れていなくて、どうしても固くなっちゃうとカメラマンに相談したら、「じゃあずっと回しっぱなしにしましょう」と言われて、スタッフが長時間、家にいて撮影するようになりました。どんなロケよりも、1人になれないことが一番つらかったですね。

1983年頃、40代のムツゴロウさん

――人間だらけの東京を避けて北海道へ来たのに、また囲まれてしまったのですね。

ムツゴロウ 本当にずっと撮るもんだから「トイレまで撮りにくるの?」って皮肉を言ったこともあります。でも何年かしたら僕も慣れてきてね、動物を世話していてもカメラの向きを気にするようになっちゃった(笑)。一緒に出ているタレントさんが動物に夢中になっている時も「カメラこっちだよ」って引っ張ったりしてね。

――テレビに出て有名になったことで生活も変わったのではないですか?

ムツゴロウ もう1回目からすごい反響でビックリしましたよ。東京を歩いてるとどこでも声をかけられるようになっちゃって、しかも僕は人と話すこと自体は好きだから、つい話しこんでしまう。それでちょっとした距離を移動するのに3、4時間かかったりして、スタッフに注意されました。

1990年頃、シベリアンハスキーたちを優しく眺めるムツゴロウさん

「動物を数で数えるな」

――全盛期で、動物王国にはどれくらいの動物がいたんでしょう。

ムツゴロウ それはよくわからんのです。取材に来た人はみんな「動物は何匹ですか?」って聞くんですけど、「そんなこと僕が知るか!」って答えてました(笑)。飼えなくなった犬を連れてきて置いていこうとする人も多くて、僕はそういうのは断っていたんだけどスタッフが勝手に引き取っちゃうこともあってね。「動物を数で数えるな」というのが僕の教えでしたから、しょうがない部分もありますけど。

――住み込みのスタッフの方も多くいたんですよね。

ムツゴロウ 動物もですけど、人間も正確に何人いたかはよくわからないんですよね。生活を捨てて北海道にたどり着いた人がいついちゃったり、弟子にしてくれと言って来たり、いろんな人がいましたから。食事はみんなで一緒にしていましたけど、見慣れない顔だなと思って「最近来た人?」と声をかけたら「3年前からいます」なんてこともありました。

――どんな人が多かったんですか?

ムツゴロウ 僕が来てほしかったのは、馬なら馬に潜り込んじゃうような人。好きになった動物と一緒に寝て、一緒に食事をして、家の中にも連れてきて、出掛ける時も連れて回るような人が現れないかなと思ってたんですよ。でもそんな根性のある人は1人もいなくてね。だから僕に“弟子”は1人もいないんです。

――ムツゴロウさんにとって、動物と人間の間に線はあるのですか?

ムツゴロウ 人間について「同じ仲間」という意識はあります。だから僕はどんな動物でも食べるけれど、人間だけは食べないことにしてるんです。もちろん「食べたらどうなるんだろう」と考えることはありますよ。でも、それは神に反するおそれ多いことでしょう。

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