昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

ライオンに「あとで遊ぼうな」

――人間以外の動物だといかがでしょう? 怪我だけでも、1990年にはアメリカでワニに引き込まれて左耳の内耳損傷の大手術、1999年にはアフリカのナミビアでライオンに首を噛まれ、2000年にはブラジルでライオンに右手中指を食いちぎられる大ケガを負っています。

 

ムツゴロウ 僕の中指を食ったライオンは大きなオスでね。「人に慣れていないから危ない」ってみんな言ってたんだけど、僕はひと目見て大丈夫そうだと思っていました。それで鉄製の檻の側までいったら、思った通り僕の顔を触ったり舐めたりする。ライオンがここまでやるのは慣れたも同然ですから心が通じたと思って「オマエ、いい子じゃないか。あとで遊ぼうな」って声をかけていました。でもその瞬間に僕の背後で人が急に動いて、それでライオンが驚いちゃったんですね。

――それでどうなったのでしょう。

ムツゴロウ ライオンが急に檻に向かってドーンとぶつかってきて、檻に掛けていた僕の右手の人差し指、中指、薬指がライオンの口の中に入ってしまったんです。3本も取られたら文字が書けなくて困るなと思って、指を抜こうとしてもライオンは口の力が強いから当然抜けない。「オマエ、引っ張るなよ」って言っても離さないんで「よし、指1本やるから勘弁しろ」って右手をすっと引き抜きました。そしたら中指だけなかったんです。すぐに病院へ行きましたけど、繋がりませんでした。

画材で埋め尽くされたアトリエ。ここに籠って絵を描く日も多い

ライオンはそういう生き物だから

――怪我をしても動物が怖くなったりはしないんですか?

ムツゴロウ 後でライオンには「オマエ、やってくれたなー」って言いましたけど、怖くなったり恨んだりはしていませんね。指を檻にかけていた人間が悪いんですから。

――ムツゴロウさんが指を噛まれて血を流しているシーンがテレビで放送されたのも衝撃でした。

ムツゴロウ お蔵入りになりかけましたけど、お願いして放送してもらいましたよ。だってライオンはそういう生き物じゃないですか。

 

――そのライオンの事故から半年後の2001年3月に、「ゆかいな仲間たち」シリーズは21年の歴史に幕を下ろしました。番組終了はどのような経緯だったのでしょうか。

ムツゴロウ 一番は僕の体力的な問題でした。ガラパゴス諸島で海に潜った時に、昔は素潜りで40mはいけたのに20mくらいで息が切れたんです。翌日に挑戦しても30mが限界で、自分の衰えを感じました。日本に帰ってから考えこんじゃって、「僕はもう向かないんじゃないかと思います」と自分から番組の終了を提案しました。

z