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残ったのは3億円の借金だけ

――「ゆかいな仲間たち」が終わってから3年後の2004年7月に、ムツゴロウ王国は北海道の中標津から東京のあきるの市の「東京サマーランド」の中に移転しました。動物やスタッフもほとんどが東京へ移転しましたが、ムツゴロウさんは北海道の自宅に残りました。どういう経緯だったのでしょう。

ムツゴロウ ムツゴロウ王国を東京で運営したいと、運営会社の人が話を持ってきました。それで僕は「スタッフのみんながOKならそれでいいよ」と言ったんです。「ムツゴロウさんも東京に来て住んでほしい」と言われたけど、行ったら自分が展示物になっちゃうなと思って断りました。1週間に1度くらいは顔を出していましたけどね。

――しかし東京に移った「ムツゴロウ動物王国」は、開園からわずか2年で運営会社が破綻し、賃料や従業員の給料が滞納される事態も起きました。

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ムツゴロウ 結局、「ムツゴロウ」という名前と動物やスタッフを欲しかっただけなんでしょうね。僕はグッズのお金も一銭ももらってないし、残ったのは3億円の借金だけ。追剥ぎにあったような気分です。

どこへ行くにもムツゴロウさんの傍を離れないルナ

――運営会社などについて思うところはあるのですか?

ムツゴロウ 恨んでもお金が返ってくるわけではないですからね。

――最終的に、2007年11月に東京の動物王国は閉園しました。犬と猫が合わせて約150匹、馬が十数頭はどこへ行ったのでしょう。

ムツゴロウ 犬や猫は王国の動物でしたが、東京ムツゴロウ動物王国でも夜はスタッフがそれぞれ自分の犬、猫として数匹ずつ自宅で世話をしていました。閉園になって、動物たちはそのままスタッフが引き取ってくれました。しかし、北海道のムツ牧場に帰って来た馬の姿を見た時は、あまりにやせ衰えていて涙が出ました。僕はいくら貧乏な時でも、あんな風に馬を痩せさせたことはない。僕の牧場に放牧してしばらくすると、まるまると元気に太って安心しました。東京では一体何を食べさせていたんでしょうね……。

動物の番組はまったく見ない

ムツ牧場には今も多くの馬が放牧されている

――「ムツゴロウ王国」は無くなってしまいましたが、近年また動物を扱うテレビ番組が増えています。坂上忍さんの「坂上どうぶつ王国」という番組も人気です。

ムツゴロウ 2018年に始まる時に、坂上さん本人が「どうぶつ王国」と付けてもいいですかって訪ねて来たので、勝手にどうぞとお伝えしました。僕の特許でもないですからね。

――番組をご覧になることはありますか。

ムツゴロウ 坂上さんの番組に限らず、動物の番組はまったく見ませんね。それは、自分の理想と違うから。僕にとっての理想は、“動物たちのありのままを受け止める”ことですよ。彼らのことを知りたいと思ったら、一緒に寝て、一緒に暮らすこと。けど、そんな風に作っている番組は1つもないでしょう。もし観たら1シーンずつぶつぶつ文句を言いそうで、それはつまらんじゃないですか(笑)。

妻の純子さんとは結婚して60年以上になる

 ムツゴロウさんの人生には、動物王国の建国、東京進出の失敗など数多くの大勝負と借金が何度も登場する。芸能界最強とも名高い麻雀や競馬、パチンコなどギャンブルとの関わりも深い。その“勝負師”としての顔は今も健在だった。(#3につづく)

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