五輪イヤーを見すえた中長期プラン
東京五輪で、日本代表の中心になる選手を獲る──。
加藤康幸が、オリックスのスカウト陣に、その「未来への指令」を出したのは「球団本部副本部長兼編成部長兼アマチュアスカウトグループ長」に就任した2014年(平成26年)のことだった。
つまり、まだやるかどうかも分からない東京五輪の「野球」に、日本代表としてオリックスから選手を送り込むことを、自らの“所信表明”としていたのだ。
「2020年がホントはピーク。そこに日本代表の選手が出るようなスカウティングをしていかないといけない。ビジネスと一緒。中長期プランです」
ターゲットは、東京で五輪が開催される“オリンピックイヤー”というわけだ。
オリックスの選手が、日本代表として活躍して金メダルを獲る。そして、金メダリストたちがチームを引っ張って、オリックスが優勝する。
そのためには、好素材の選手を発掘し、ドラフト会議で指名する必要がある。
さらに選手のレベルや潜在能力に応じた綿密なトレーニング計画を立て、的確なコーチングも行い、育成環境の整備もしていかなくてはならない。
ソフトとハードの両方が整わなければ、この中長期プランは実現しないのだ。
加藤は、その難解なプロジェクトに着手しようとしていた。
加藤との一問一答から、その“五輪イヤー構想”を抜粋してみる。
野球がオリンピック競技に復帰することが決まった時に、うちの選手が主力としてキーになるポジションにつくことを目標にしようとスカウトには話しました。理想論として、ですが。たとえば、ピッチャーで佐野(皓大=2014年ドラフト3位、現外野手)が選ばれ、キャッチャーで若月(健矢=2013年ドラフト3位)が選ばれるというふうになればいいですよね。WBC、もしくはオリンピックで日本の野球が世界からフォーカスされる時にその所属がオリックスというのはすごくマーケティング的には価値のあることです。だから僕は、中長期目標の1つに入れているんです。
「Full‐Count」の2015年(平成27年)1月30日付配信は「オリックス大補強の舞台裏 改革を託された男の哲学」