宗佑磨、吉田正尚、山本由伸……。2021年にペナントを制覇したオリックス・バファローズの躍進を支えた中心選手たちは、ある編成部長のスカウティングによって発掘されてきた。「俺、もしあのまま辞めないでいたら、最強のチームを作ってたよ」と語る元編成部長は、いったいどのような考えのもと、スカウティングを進めていたのだろうか。
ここでは、スポーツライターとして活躍する喜瀬雅則氏の著書『オリックスはなぜ優勝できたのか 苦闘と変革の25年』(光文社新書)の一部を抜粋。沢村賞投手・山本由伸の指名にあたってのエピソードを紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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週1の選手レポート、月1のスカウト会議
スカウトは、加藤のような元プロ選手でないケースは、むしろレアだ。大半が、選手を引退してからスカウトへと転身する。
「主観的な評価も、もちろん大事。選手目線での評価だよね。ただ、もう一つ、客観的な評価を教えてくれ、とスカウトには言ったんだ。50メートルは、誰がどこで走っても50メートルは50メートル。遠投は遠投。試合の結果だけじゃなくて、フィジカルな部分で、例えばもも回りの寸法を聞いてくるとか、上腕二頭筋の幅をメジャーで測らせてもらうとかね。そうすると、同じようなタイプの選手がいた時に、どっちがプロに入ってから体がきっちり作られるとか、そういう比較ができるんですよ」
その“意識づけ”のために、加藤は毎週、スカウトたちに担当エリアの選手に関してのレポートを提出させた。さらにスカウトたちが集まってミーティングや事務作業をするスペースを設けた編成室に「キーワード」を記したマグネットを作り、ホワイトボードに張った。
「情報量」「洞察力」「観察力」
30近い単語が、ランダムに張られている。それらは選手を視察する際に、加藤が重要視するポイントでもあり、レポートに盛り込むべき大事な要素でもあった。
さらに、各スカウトが視察した選手で、指名候補になり得る力を持った選手は、そのプレーぶりをビデオで撮影し、加藤のもとへ送信しておくことが必須となった。
この素材をもとに、毎月1回のスカウト会議では、アシスタントが編集した「右投手」「左投手」「捕手」といったカテゴリー別の映像を流す。また、データとして上がってきている球速別に「今週のベスト20」といった具合に分類し、プリントしたものを張り出した。