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「日本におけるノンフィクションの最高峰」と「あまりにも見事な胸」のあいだ

水道橋博士『藝人春秋2』刊行記念、『お笑い 男の星座』シリーズ電子書籍化に寄せて

2017/11/30
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 さて、本書にまつわる「実話」をオレも最後に紹介しよう。今回解説の仕事をもらったきっかけは、オレが2009年に『勝間和代のBook Lovers』(J-WAVE BrandnewJ)というインターネットラジオ番組に出た時に『お笑い 男の星座2』を絶賛したことを博士が知ったことである。

 当時、勝間氏は『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』の大ブレイク後、次々と本を出し続け、『断る力』もベストセラーとなっていた時期にあたる。そして、『結局、女はキレイが勝ち。』で本人が最高の美貌に撮れたと判断したであろう笑顔写真をドーンと表紙に登場させ、「キレイってwwww」と世間から失笑される前夜の絶頂イケイケの時期のことだ。

 オレはラジオブースで勝間氏と向かい合っていたのだが、テレビで見せる理知的なその雰囲気とは異なり、あまりにも豊満で見事な彼女の胸に釘付けになり、それを常に眺め続けながら気もそぞろの状態でゲストとしてオススメする書籍について語っていた。

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 ここでオレにとっては一生の後悔とも言える失態を犯してしまうのである。番組MCである勝間氏は台本を読みながらこう言った。

「はい、続いての中川さんのオススメ本は『お笑い男の星座2』です」

 これだけ見ると違和感はないだろうが、勝間氏は本来の本書タイトルの読み方である「お笑い、男の星座」ではなく「お笑い男、の星座」と読んだのである! 「お笑い男」ってなんだよ! 彼女の胸が気になって仕方がないオレではあったものの、さすがに「お笑い男、の星座」にはモーレツな違和感を覚えた。「勝間さん、『お笑い、男の星座2』です」と訂正しようかとも思ったのだが、このあまりにも見事な胸を持つ女性に対し、異論を挟むのをなぜかオレは憚られてしまったのだ。結局、この収録中、オレは勝間氏のおっぱいから放たれる強力ビームに脳内が焼き尽くされてしまったのである。

 そして、勝間氏の胸が気になりながらも「やべぇな、さっきの発音、修正しなくちゃマズいよな……」と思いながらも収録は終了。勝間氏のさすがのMC力により、オレも楽しく喋り続けていたのだが、「お笑い男、の星座」は直さなくてはマズい……というモヤモヤ感はあった。

 しかし、最後に奇跡は起こった! さすがはJ-WAVEである。番組のディレクターがこう言ってくれたのだ。

「勝間さん、さっき紹介した浅草キッドの本ですが、正確な読み方は『お笑い、男の星座2』です。『お笑い男、の星座』ではないので、そこだけ録り直させていただけませんでしょうか」

 勝間氏は「あっらー、そうだったのぉ、じゃあもう一回やるわね」と言い、「はい、続いての中川さんのオススメ本は『お笑い、男の星座2』です」と修正し、無事本番では正しい読み方で『お笑い 男の星座2』は電波に乗ったのであった。

 さらにこの話にはオチがあり、オレがあまりにもその後勝間氏の胸をホメるものだから週刊SPA!の編集部から「中川さん、『勝間和代を女として見る~勝間さんとウキウキ横浜デート~』って企画やりませんか?」とオファーが来た。オレは「喜んで!」とまさに居酒屋「庄や」の店員のごとく返事をしたが、勝間氏の側からは「そういった企画はちょっと……」と断られた。やはりオレが胸を見過ぎていたことは見透かされていたのだ。

 さて、本来この解説は「2000字程度でよろしく」と文藝春秋の編集者から言われていたのだが、気付いたら3000字超えておるではないか! と、それだけ言いたいことがある不朽の名作なので、是非とも「日本におけるノンフィクションの最高峰」としてお友達に紹介してください。
―――
中川淳一郎
なかがわ・じゅんいちろう

 

1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者、PRプランナー。一橋大学商学部卒業後、博報堂で企業のPR業務を請け負う。2001年に退社し、雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ウェブを炎上させるイタい人たち』『ネットのバカ』『縁の切り方』『内定童貞』ほか。

藝人春秋2 上 ハカセより愛をこめて

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2017年11月30日 発売

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藝人春秋2 下 死ぬのは奴らだ

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「日本におけるノンフィクションの最高峰」と「あまりにも見事な胸」のあいだ

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