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 路線バスの場合は双子ベビーカーを乗せるとなると、どうしても時間がかかってしまいます。そういう時、やっぱり周りの視線が気になったり、「運転手さんやほかの乗客に嫌な顔されたらどうしよう」と思う方は多いと思います。

 そこで1分、2分を許容してくれるような、優しさや思いやりを持ってくれたら「嬉しいな、ありがたいな」と思います。私たちも年を取って、足が悪くなって車いすになる可能性だって十分あります。それこそ若い方には双子が生まれる可能性だってある。「自分もそういう立場になるかもしれない」という想像力を持ってくれたら、とても助かります。

スポーツ観戦では回転ドアも通れずに…

 他にも、出かけた先でも、例えば授乳室が双子を想定していないんです。

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 大型ベビーカーだと入れない場所がほとんどですし、何とか入れても出入り口を塞いでしまうから、入りにくい。もちろん個室になんて絶対に入れないし、「1人だったら授乳さえできないのか…」と思ってしまうこともありました。そんな経験が続くと、1人では出かけられないのかな、という諦めの気持ちも出てきます。それも寂しいことなんですけど…。

 この間も、都市対抗野球の試合を見に東京ドームに双子を連れてったんですよ。その時もドーム入り口の回転扉を通れなくて…。畳んでも入れないんですよね、あの回転扉。双子用だと幅があるから「畳んでもダメです」と言われて。結局、なんとか関係者入り口まで行って入れてもらうことになったんですけど、なかなかスポーツ観戦も厳しいなと。

©️iStock.com

「当たり前のこと」が少しでもできるように

 そんな風に、出かけた先でいろんなハードルの高さを経験するので、多胎育児中の家庭は引きこもってしまう確率がすごく高いと聞きます。ただでさえ大変な育児中に、外にも出られないとなると本当に精神的に大きなダメージを受けてしまう。もう少し気軽にご両親が「出かけてみよう」と思えるようになるといいですよね。

 別に「双子連れを特別扱いしてほしい」とかではないんです。

 ただ、いまはまだ双子のパパ・ママは、電車に乗ったりバスに乗ったり、そういう当たり前のことが当たり前にできない環境にあると思います。

 電車に乗れない、バスに乗れない。授乳室も入れず、スポーツ観戦もできない――そういった現実があると思います。みんなができていいはずの「当たり前のこと」が少しでもできるように、ちょっとのやさしさや少しの思いやりを、みんなが持ってくれたら嬉しいなと思います。