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 さらには、東京アクアティクスセンターなど、東京都が建設した新規恒久施設は、都政にとって厄介なお荷物になる可能性が高い。今後、各施設の限定的な収入と膨大な維持管理費とのアンバランスに東京都は長期間、苦しめられることになるだろう。

 鈴木知事が有楽町から西新宿に都庁本庁舎を移転させた見返りに東京の東側の地域に建設した、江戸東京博物館などの公共施設が、そのランニングコストによって都政を苦しめた過去とみごとにオーバーラップする。歴史は繰り返す。ビッグイベントの後始末が今後、都政に重くのしかかってくるのだ。

 コロナと五輪が都財政に残した傷は深い。順風満帆だった都財政は一気に谷底に落とされる。数年で回復することなど望むべくもない。

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さらに根深い問題も…

 問題はそれだけではない。小池都政の5年間で都庁の官僚組織が疲弊したのだ。自分ファーストのトップは自らの権力基盤を固めるため、極端な情実人事と報復人事を繰り返した。局長級であっても知事にもの申せば、容赦なく降格させられた。都庁官僚は極度に萎縮し、イエスマンだけが生き残る悪しき風習が蔓延した。

 加えて、東京都は人余りの時代を迎える。財政が順調だった直近の約10年間、毎年、千数百人規模で新規職員を採用した。五輪需要への対応という側面もあった。事実、組織委へは東京都から千数百人の現役職員が出向していたが、彼らは役割が終わったからといってクビを切られる訳ではない。短期的にはコロナ対応で人手不足の状態であっても、中長期的には大量採用のツケで余剰人員を抱え込むことになる。すでに新規採用枠の大幅な縮小が始まっている。

 都政はこの先、財政も組織も人員も「氷点下の時代」に突入せざるを得ない。今後、東京都に必要なのはパフォーマンスに明け暮れる都知事ではない。批判を恐れず都民のために地道に汗をかくトップでなければ、都民・事業者の生命・財産を守り抜くことはできない。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2022年の論点100』に掲載されています。