2021年(1月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。ライフ部門の第5位は、こちら!(初公開日 2021年7月6日)。
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年配者はよくテンを打つのか
いきなり名前を出して恐縮ですが、作家の坂井希久子さんがツイッターで、お父さんから来たメールの文面について〈読点の打ち方が高齢である〉と評しています(2021年5月24日)。新型コロナウイルスワクチンの予約がなかなか始まらず、〈政府の、対応の、悪さには、凄く腹が立ちますね!〉と怒っていたそうです。
そういやロクデナシの父(72歳)は無事ワクチン予約できたのかな? とふと心配になりメールしてみたら、彼の住む地域ではまだ75歳以上が対象らしく、予約が始まっていないそうな。「政府の、対応の、悪さには、凄く腹が立ちますね!」と、珍しく真っ当なことを言っている。読点の打ち方が高齢である。
— 坂井希久子 (@kiku_sakai) May 24, 2021
ワクチン接種の進行状況については、私なりに思うところはありますが、この文章の眼目はそこではありません。読点(テン)の打ち方に世代差があるのか、どう打てば読み手に伝わりやすいのか、ということを考えてみたいのです。
坂井さんのお父さんの文を見ると、〈政府の、対応の、悪さには、〉と文節ごとにテンを打った部分があります。国語の教科書ではこういう打ち方はあまりしません。では、これは年配者の打ち方かというと、必ずしもそうではなさそうです。国語辞典を作る私は、利用者からの感想文を読む機会がありますが、年配の人の文章でも、テンを使わずに長文を続けるものがあります。
「何十年も前に買った辞書をずっと使い続けてきましたが最近は俳句の会にもよく顔を出すようになったので思い切って新版を求めました」(実例に基づく作例)
テンの打ち方は、書き手の個性や、その時の必要などによって変わります。いら立つ気持ちを強調する効果を狙って、あえて文節ごとにテンを打つ場合もあるでしょう。
若者から見れば「句読点オジサン」
年配の人の文章にテンが多い、と若い人たちが感じるとすれば、それはLINEなどの文章をイメージするからではないでしょうか。
一般に、若い世代は、LINEを含むSNSの文章で句読点をあまり使いません。
「英語のリスニング能力低すぎて先生の言ってること全然わからん もっと勉強しないと授業ついて行けんくなるかも」(作例)
などと、少し長い文でもテン・マルなしですませます。
一方、上の世代では、一般的な文章を書くのと同じ感覚で、SNSでもテンを使う人がいます。それで、若者の目からはテンを多用しているように感じられるのでしょう。
テンの多い文は、いわゆる「おじさん構文」の特徴のひとつにも挙げられています。
2017年4月、ツイッターで「オジサンになりきろう講座」というのが投稿され、おじさんっぽいLINEの文章の特徴が紹介されました。やがて、これが「おじさん構文」として広まりました(正確には「構文」というより「文体」です)。