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「裁判官が後悔するような嫌がらせをしろということ」

 しかし、野村の裁判に注目していた、長年にわたり現場で暴力団犯罪の捜査指揮を続けてきた警察当局の幹部は、「裁判官に対して『後悔するよ』とは、要するに外にいる子分たちに、裁判官が後悔するような嫌がらせをしろということだろう。このようなことは決して許されることではない」と批判する。

 そのうえで、「二審でも死刑判断が維持されて、野村にはさらに後悔してもらわないと」と怒りをにじませて付け加えた。

元警部銃撃事件で指定暴力団工藤会本部事務所へ家宅捜索に入る福岡県警捜査員 ©️時事通信社

 全国の暴力団犯罪など組織犯罪対策を担当してきた警察庁幹部は、「裁判官に対する襲撃事件などは絶対にあってはならないこと。司法に対する攻撃は、国家に対する挑戦のようなもの。許されないことだ」と厳しい口調で述べる。さらに、「裁判官が襲撃されるようなことになれば、麻薬組織がはびこる南米などのとある国のようになってしまう」とも述べた。

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 それは、治安維持がままならず法治国家とは呼べない無法国家と同様と、国際社会からみなされることを意味する。北九州市は工藤会による凶悪事件が相次いだことから、「暴力の街」「修羅の街」とまで呼ばれた。そこにもし裁判官襲撃事件など起きてしまえば、「暴力がはびこる国」「修羅の国」との汚名をかぶせられかねないことでもあった。

北九州の街並み ©️iStock.com

 野村に死刑を言い渡した裁判長は東京高裁に異動している。現在は警察当局の身辺警護の対象となっており、警視庁が24時間体制で警備にあたっている。

 福岡地裁は判決から3日後の2021年8月27日、野村について接見禁止を決定した。裁判官への嫌がらせを防ぐ意味かどうかは明らかになっていないが、工藤会の組員らを通じて事件の関係者らを脅すなどして証拠隠滅を図る恐れが否定できないとの判断とみられた。