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 どちらかに絞った方がいいよな。

 そもそも自分がいるのは大企業。何かの片手間に仕事をすることを想定された仕組みではない。俺はここにいるべき人間なのか。とはいえ、給料は安定しているし、将来も保証されている。周りに相談したって「絶対残れ」と言う。

 常識的に見たら会社を辞めるなんてありえない。やめるのはYouTubeだ。オリックスの応援をやめるわけじゃない。今の殺人的な応援のペースを落とせばいい。結果だけを見て一喜一憂することだってオリックスファンであることには変わりはないのだ。

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 でも……俺のオリックスへの想いはそんなものだったのか?

 応援してはじめて、大好きなオリックス・バファローズが優勝するかもしれない。さらにその時に、僕には歓喜の動画を待ってくれている7万人のYouTube視聴者もいる。なにを迷うことがあるのか。この先が見えない時代、自分の情熱を捧げることを極めて生きていくのも悪くない。

 僕は会社を辞めました。

 後半戦スタートと同時に退職をし、試合観戦、動画投稿に本腰を入れることにしたのです。たとえこの先、どん底に落ちたとしても、道は自分で切り拓けばいい。それはほかでもない、あの負け続けのどん底から這い上がってきたオリックスの選手たちが教えてくれたことでもありました。

夢を、ドラマをありがとう、オリックス・バファローズ

 この決断に一片の悔いなし!!!

 ……なんて、会社を辞めた直後の8月は勝ち星を重ねていたこともあって強気でしたが、9月に入ると、主砲の吉田正尚選手故障離脱を皮切りに、山岡投手、バルガス投手も離脱。代打の切り札ジョーンズ選手が帰国。その間に破竹の勢いで勝ち星を重ねていたロッテに首位を明け渡してしまい、一時は4ゲーム差を離されて、早速後悔しはじめます。

 いや、ウソです。悔いは本当にありませんでした。僕自身後ろを振り返るような性格ではありません。前に進むだけですが、それでも周囲からは嫌でもいろんな声が聞こえてきます。

「B-モレル人生かけたのに可哀想」
「お前がフラグ立てるから失速した」
「こうなることを見越していないB-モレルはやっぱり馬鹿」

 人間というのはどうしても多数の意見に流されてしまうものであり、本当に自分が愚か者のように思えてくる時期もありました。

 そんななか、首位と3ゲーム差で迎えた9月28日からの対ロッテ3連戦。優勝へはもう1敗も許されませんでした。離脱していた吉田正尚選手が意地の復帰、強行出場で雰囲気が変わったのか、初戦、2戦目を完勝。そして迎えた3戦目。ずっと応援してきた後藤駿太選手のタイムリーエラーで劣勢となるも、9回にT-岡田選手奇跡の逆転3ランで3連勝!! ゲーム差なし!! いける。僕は確信しました。いや、たとえ優勝を逃したとしても、こんなに素晴らしいチームに人生を捧げて後悔なんかあろうはずが無い。

 その後、吉田正尚選手が骨折で再び離脱するも「全員で勝つ」のスローガンを元に見事10月27日に25年ぶりのパ・リーグ優勝を成し遂げました。

 続くCSファイナルのロッテ戦も小田裕也選手のサヨナラバスターヒットで優勝。日本シリーズこそ敗れましたが、連日の熱戦、5戦目には本物アダム・ジョーンズ選手の代打決勝弾。こんな寒い時期まで、こんな野球に『熱く』させてくれるなんてもうお腹いっぱいでした。

 夢を、ドラマをありがとう、オリックス・バファローズ。5ヶ月間東京で悩みぬいた一人の社会人の思いも成仏されたように思います。

 プロ野球チームを応援する場所、熱量なんて人それぞれです。オリックスファンが3人なら3通り。10人なら10通り。そこには上も下もありません。自分が納得できる応援ができればそれでいいのだと思います。これからもオリックスがその全ての人の誇りでありますように。

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