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「普通に生きている人が、人生の一番のプロだ」
若い頃、筆まめでよく母に手紙を出していた父。私にも、人生の節目には、手紙をくれました。印象に残っているのは、私が報道記者として就職した際のもの。激励の最後に、珍しく、戒めの言葉がありました。
「君はこれから、ニュースになる人を追いかける仕事をする。だが、世の中を支えているのは、大勢のニュースにならない人達だ。役者の仕事は、その人たちの気持ちを両手で掬ってそっと差し出すことだ。君もそのことを忘れないでほしい」
父がよく言っていたのは、「普通に生きている人が、人生の一番のプロだ」ということです。地に足をつけて、誠実に生きている人が一番すごい。役者はそれを見せてもらって、表現するのが仕事なのだと。
このリスペクトがあったからこそ、様々な役を演じることができたのだと、今となっては思います。