1話の澪は恐妻モードですが、ワンオペで必死に育児・家事をこなし、さらにファミレスのアルバイトもしており、要領が悪く出世もできない元春にイライラが募っていく様が描かれます。元春も抜けているところはあるもののそこまでダメ亭主というわけではないため、双方に自分が正しいという言い分があり、気持ちがすれ違っていくのです。
関係を円満に続けるための真理
ただ元春は、親友に「もう限界、離婚したい」「(澪は)一度スイッチが入るとモンスターになる」と愚痴ったり、ソクラテスの言葉「良妻を持てば幸福であり、悪妻を持てば哲学者になる」を引用して「俺は哲学者だ」と思っていたりするなど、被害者意識の塊。変わったのは澪のほうで自分に非はないと言わんばかりでした。
恋人・夫婦間の喧嘩や問題はどちらかが一方的に10:0で悪いなんてことはほぼないもの、というのが筆者の職業上の持論。実際、“相手が悪い!”“向こうのせいだ!”と思っているようなトラブルでも、第三者であるカウンセラーがフラットな視点で話を聞くと、8:2や7:3ぐらいで“自分は悪くない”と思い込んでいる側にも何割かの非があるケースがほとんどです。
ですから元春は、自らの非を認めて相手の主張も尊重すべきという、関係を円満に続けるための真理に気づいていないように感じました。
元春は後悔の連続
2度めの人生でも巡り会った二人は、職場の上司と部下としてはからずも距離が縮まっていきます。
その過程で元春は、1度めの人生での澪に対する言動を思い返しては後悔の連続。
澪の就活中にプロポーズしたことで、彼女が社会人として自立する未来を奪っていたこと。「目の前の人が笑っててくれるのが一番」という澪のささやかな望みを、自分が壊していたこと。澪の母が認知症を患っていたのを知らず、相談しようとしていた澪にきちんと向き合っていなかったこと。