地震への対応はどうなっている?
一方、リニアは地下トンネルを走ることになるが、地震への対応はどうなのか。2035年頃までには、東南海地震(紀伊半島沖から遠州灘にかけての海域で起こる)が70-80%の確率で起こると言われている。
「リニア中央新幹線の建設は大動脈の二重系化を意味しますから、地震をはじめとした災害に対する国家としての抗堪力が大幅に上がります。東海道新幹線が海側、リニアが山側と、異なるルートで二重系化を図る。それに加えて超電導リニアというシステム自体が非常に地震に強いのです。側壁と底面に極めて強固なU字型の構造物(ガイドウェイ)を形成しており、車体はその中を強力な磁力で保持されて走行するため脱線の心配がない。また、路線の多くが地下を通るのですが、地下の構造物は地震の際には地盤と一緒に揺れるため、地上の構造物と比べて破壊が起こりにくい。こうした地震に強いシステムにより二重系化されるわけですから、まさに災害に対する抜本的な備えと言えるでしょう」
静岡県が反対するトンネル工事における大井川の水資源問題については昨年末、政府の有識者会議が中間報告をまとめ、トンネル工事で湧き出る水の全量を戻せば環境への影響は抑えられるとの見解を示した。しかし、静岡県は県の専門部会に持ち帰り検討すると言っており工事開始の目途が立っていない。これに対する葛西氏の観方は冷静だった。
「これらは東海道新幹線の時もそうですし、他の新幹線や高速道路の建設でもあった、公共事業が必ず直面する課題です。そして万全の対策を立て、慎重に工事を進めることで問題を乗り越えてきたのが公共事業の歴史であって、中央新幹線についても同じ道のりを辿っているのだと思います」
政府の超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会の委員長を務めた森地氏、静岡県の南アルプスを未来につなぐ会の松井氏を交えた座談会の全文は、「文藝春秋」3月号(2月10日発売)に17頁にわたって掲載される。