神戸製鋼所に続き、三菱マテリアルと東レでも製品検査データの改ざんが見つかった。日本を代表する製造業で、どうして検査データの不正が続くのか。3社に共通するのは素材メーカーであり、取引先が求める規格からはずれても合意があれば出荷できる「特別採用(特採、トクサイ)」と呼ばれる商慣行があることだ。冷戦終結後のグローバル化の進展で国際競争が高まり、納期やコストを優先せざるを得ない経営環境に置かれたことも不正が横行する要因となった可能性が高い。
「誤差の範囲」と勝手に解釈
神鋼、三菱マテリアルの子会社、東レの子会社に共通しているのは、取引先の部品メーカーなどが要求した寸法や強度などの規格を下回っていたのに、規格に達しているように検査データを書き換えて出荷していたことだ。神鋼はアルミや銅製品など、三菱マテリアル子会社はゴム素材のパッキンや銅製品が問題となった。
東レの子会社はタイヤメーカーに「コード」と呼ばれる補強材を納入していた。タイヤメーカーが求める強度の規格値は「260以上」だったのに、実際に測ったら258だった。製品を最終チェックする工場の品質保証室長は、この値を260に書き換え、「正規品」として出荷していた。
タイヤメーカーが求める規格値260に対して、258はわずか1%にも満たない誤差で、品質保証室長は「規格値からのはずれが僅差で、製品の品質上問題はない」と勝手に解釈していた。東レも「規格内の製品と実質的な差はない」と説明するが、取引先との契約違反であることは間違いない。神鋼、三菱マテリアル子会社のデータ改ざんも同様で、取引先の要求を満たしていないものを「誤差の範囲」と勝手に解釈して出荷していた。