15日、所得税法違反の罪に問われている日本大学の田中英寿前理事長(75)の初公判が東京地裁であった。大阪市の医療法人の前理事長や、日大の元理事から受け取ったリベート約1億1800万円の所得を隠し、約5200万円を脱税した罪に問われている。裁判で田中氏は「起訴された事実を争う気はありません」と供述。起訴内容をおおむね認めたという。
日大を13年にわたって支配してきた田中前理事長。「週刊文春」が、田中氏の力の源泉に迫った当時の記事を再公開する。(初出:週刊文春 2021年12月9日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)
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11月29日、東京地検特捜部は日本大学の田中英寿理事長(74)を、約5300万円を脱税した所得税法違反の疑いで逮捕した。
日大問題を長年追い続け、「週刊文春」で、田中氏の自宅から約1億円が見つかったことや、特捜部が脱税での立件を模索していることをいち早く報じたジャーナリストの西﨑伸彦氏。同氏の取材によれば、事件の背景には田中氏と暴力団との蜜月があった。
2014年2月に「週刊文春」は、住吉会の福田晴瞭会長(当時)と日大元幹部、そして田中氏が3人で並ぶ写真を掲載した。その翌年には、山口組六代目の司忍組長と田中氏が名古屋のクラブで親密そうに寄り添う写真を外国メディアが報道。さらに田中氏と、司氏の出身母体である弘道会幹部で、同会傘下の佐々木一家総長でもあった山本岩雄氏(故人)とのツーショットも出回った。こうした暴力団との関係を背景に、田中氏は日大、および子会社の日大事業部を恐怖で支配し、独裁体制を敷いていたという。
「大相撲には田中氏が育てた日大出身の親方が複数いますが、例えばある親方が部屋を開いた際は、小雨の降る地鎮祭に、後に山口組若頭となる髙山清司氏が姿を見せたと言われていた」(日大関係者)
2005年、司氏は山口組六代目に就任したが、その一方で、1997年の組員による拳銃不法所持の共謀の容疑について長い裁判を戦っていた。2005年12月に最高裁で有罪が確定するが、その過程で司氏を擁護する“意見書”が提出された。
「憲法学者である慶応大学の小林節教授(当時)が作成したものでしたが、その段取りをしたのが田中氏でした。田中氏は以前に面識のあった小林教授を銀座のしゃぶしゃぶ店に連れ出した。そこに髙山氏が待っていて、意見書の作成を依頼したのです」(田中氏の知人)
当時、田中氏は日大常務理事だったが、その行動は教育者の矩を軽々と越え、さらにエスカレートしたという。