司法の世界では、ほとんどの障害者の逸失利益は、全ての労働者の平均よりも低く認定されていいるのだ。
努力重ねた娘の11年 「証明」を求められ…
今も、4年前と変わらない部屋。安優香さんは障害がない子どもと同じように、一生懸命勉強してきた。
井出さつ美さん:
安優香らしい、なんかほっこりする文章書いてるなと思って。『かき氷、食べたら冷たくてさらなり、頭が痛くてわろし』とか。(頭が)キーンてするからね、かき氷。安優香らしい発想やなって思って、なんかほっこりするでしょう
両親は裁判で、安優香さんに「健常者」と同等の学力があったことなどを証明するために、勉強に使っていたノートなどを証拠として提出しているが、もどかしい気持ちを抱えている。
井出努さん:
娘を奪われた精神的な苦痛は遺族の方にしかわからない気持ちだと思う。そこに輪をかけて、自分の娘がどういう子だったか証明しろって言われても、ほんとどん底ですよね。逸失利益という言葉自体がなければ、ややこしい民事裁判はないのかなと思ったり…
専門家「人の価値の平等の観点からみると違和感」
傷ついた遺族をさらに苦しめている“逸失利益”。司法の専門家も、この考え方には限界があると指摘する。
立命館大学・吉村良一名誉教授:
逸失利益は、人の価値の平等という点から見たら違和感がある。そんなのおかしいから根本から変えなさいという論文を学者は書くが、残念ながら裁判官は受け入れない。
裁判所の判断のよりどころになるのは憲法であり法律だが、もっと広く言えば社会の人々がもつ法意識です。『そんなのおかしいね』と思うかどうか。
もし安優香さんの裁判で平均賃金から減らすという判断をするなら、裁判所の良識を問われると思う
努力を認めて…裁判で闘う理由
どうして、障害があることで将来を否定されてしまうのか。どうして、残された家族が苦しまなければならないのか。
安優香さんの努力を認めてもらうために。それが、両親が裁判を戦う理由だ。
井出努さん:
『どうして?安優香が悪いの?』と、幻聴とも言える娘の声が耳から離れません。娘の11年間の努力と将来を否定され、私たち家族の精神的苦痛は増すばかりでした。…安優香、もう少しの間 パパに力を貸してください
(関西テレビ「報道ランナー」2022年2月1日放送)