コロナ禍のなかで、2020年2月末より出演を予定していた舞台がちょうど感染拡大の本格化した時期と重なり中止となったが、同年秋に主演した舞台『ゲルニカ』(長田育恵作・栗山民也演出)は東京を皮切りに各地を巡回している。
ピカソの大作絵画で知られる、内戦下のスペインでナチスドイツによる空襲を受けたゲルニカの町を舞台にした同作で、上白石は大地主の娘でありながら、その身分を捨てて自分の力で生きようとする少女・サラを熱演した。作者である劇作家の長田育恵は、主演が彼女に決まった段階で、《上白石さんが、サラという少女として、この作品の中で世界をどうやって見渡し、考え、成長していくかをとにかく描いていこうと思って》、彼女に合わせて物語を組み立て、あて書きしたという(※5)。
「朝まで遊んだりとか、そういう大学生チックなことは…」
演出の栗山民也はこれより前に、井上ひさし作の『組曲虐殺』の2019年の公演で姉の萌音と仕事をしていた。翌年の『ゲルニカ』の主演発表時には、《お姉さんの萌音さんとは去年ご一緒し、その美しく確かな感性を実感、まさに「奇跡の姉妹」だと思います。今度は、妹の萌歌さん、本気でぶつかり合いましょう》とコメントした(※6)。妹の彼女にとっても栗山は尊敬する演出家で、その著書『演出家の仕事』を題材に大学のレポートを何枚も書いたこともあるという。
仕事をこなしながら大学生活もしっかり謳歌してきたようだ。コロナ禍でオンライン授業になってからも課題に夢中で取り組んだ。彼女いわく《というのも普段のお仕事の環境では気づけないでいることとか、考えるべきこととか授業の中にたくさんあるんです。だから時間はたくさんあるはずなのに日が暮れるのが早いというか、毎日があっという間です》。勉強だけでなく、《自粛で会えないぶん友達とスマホのゲームで朝まで遊んだりとか、そういう大学生チックなことはやっています(笑)》とか(※7)。
この4月からは前出の『ちむどんどん』のほか、日本テレビ系の新日曜ドラマ『金田一少年の事件簿』に主人公の幼馴染の高校生役で出演も決まっている。昨年放送のWOWOWのドラマ『ソロモンの偽証』にしてもそうだが、ドラマでは最近にいたるまで高校生役が多い。