「保育園落ちた日本死ね!!!」と書かれた匿名ブログが大きな話題を呼んでから間もなく2年が経つ。今年もまた保育園の入園申請の季節がやってきた(一部地域ではすでに締め切り済み)。
待機児童問題がニュースなどで報じられたことで、保育園を探すための活動、いわゆる「保活」という言葉も一般化しつつある。しかし、まだまだ保活をめぐる誤解や知識不足も目立つという。
保育園行政に詳しい地方議員3名が語り尽くした、パパママ必見の座談会。
(司会・構成:渋井哲也)
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――まずは保育政策とからめた自己紹介をお願いします。
上田令子(東京都議) 私は「保育族」を名乗っています。もともと、マタハラを受けて会社をクビになり、待機児童の当事者になったことが政治家の道に入るきっかけでした。江戸川区は働く女性に冷たい自治体で「ワーキングマザーのツンドラ地帯」なんて言われていたほど。政治を介して、この課題を解消しなければと思い立って、1999年に働く母親の会「江戸川ワークマム」を作りました。当時はまだSNSがなく、ホームページと掲示板を開きました。
本目さよ(台東区議) 私も子育て支援には力を入れています。議員になる前、ベンチャー企業で人事を担当していたんですが、あるとき社員が会社で初となる育休を取得しました。「よし、これは実績になる」と喜んだのも束の間、「子どもが保育園に入れないので、職場に戻れない」と告げられてしまった。小さな会社が一人の社員のために保育園を作ることはできません。ならば、自治体から変えないといけない。「誰か、議員になって」と思っても、なかなか難しい。そこで、まずは自分が議員になろうと志したのです。
伊藤陽平(新宿区議) 私は、教育政策がやりたくて議員になりました。いま29歳で、同世代では子どもを持つ友人も増えてきました。ところが、きちんと保育園に入れるのかどうか、知識がまったくなくて困っているという声があちこちから聞こえてきます。集まった声をもとに議会での提言も行っています。
初めての人には制度がわかりにくい
――本日お集まりいただいた3名の共通点は、自主的に「保活セミナー」を開いていることです。
上田 いわゆる「保活セミナー」の主催はもう19年目になります。多分、この手のセミナーを開いたのは私が初めてだったのではないでしょうか。最近でこそ「保活」の情報がインターネットでも手に入るようになりましたが、当初は不正確な噂も多くて……。ノウハウを知らないために保育園に入れない人も少なくありませんでした。保活のトレンドは変わりますから、情報は毎年アップデートしています。
本目 私は、保活セミナーを開いたのは今年が初めてです。知り合いの区議から、とてもニーズがあると聞かされたからです。本来、行政がきちんとアナウンスすべきですが、区に提案してもオフィシャルな説明会は開かないと言われてしまいました。保育園の入園手続きは点数の計算方法が複雑で、台東区ではどういう人が優先されるのか、初めての人にはわかりにくい。分厚い資料を読むのも大変です。
伊藤 私も今年からです。保活セミナーは、もともと先輩議員がやっていたんです。保活のテクニックに加えて、子育て支援セミナーという形で開きました。また、インターネットを中心に活動をしていることもあって、普段からフェイスブックなどのSNSを活用したコミュニティで意見や情報を交換しています。
上田 コミュニティは本当に大事なこと。去年はオロオロしていたママも、1年経てば「先輩ママ」になりますから。
伊藤 そうですね、私のセミナーにも行政よりも詳しいような人に参加してもらっています。行政に相談するのと違って、先輩ママが相手ならば精神的な安定度が違いますからね。
――まったく知識がない人からすると、子どもを保育園に入れようと思ったら「保活とは何か?」から始まりますよね。
上田 以前はそうでしたが、最近では勉強熱心な方が多くて、こちらも詳しく調べておかないと突っ込まれてしまいます。基本はまず公的な資料をじっくり読むこと。この読み解きには、是非パパも関わってほしいですね。
本目 本来ならば、保活をしなくても希望者が全員保育園に入れることが望ましいので、行政をチェックする身としては申し訳ないのですが……。
伊藤 情報をキャッチする競争のようになってしまっている状況は良くないですね。行政側の情報発信、そして何よりも保育園整備は大前提です。
本目 あと、私は保育園の新規開設情報などをブログで発信しています。確かに保育園の数は増えているのですが、そのためか「入れるだろう」と安心してしまっている方もいます。行政側で保育園を毎年増やしてはいますが、都心は人口も共働き世帯も増えていますから、まだまだ厳しい状況には変わりない。その点は注意喚起しています。