11月22日、この日に開会した熊本市の定例市議会で、緒方夕佳議員(42)が生後7カ月の長男を抱きかかえて出席しようとしたところ、議会事務局の職員や議長から退席を求められた。緒方議員が拒否すると、対応を話し合うため開会が40分遅れることになった。
一連の出来事がニュースとして報じられると、インターネットを中心に賛否両論の激しい議論が巻き起こった。
当事者である緒方議員は、なぜ今回の行動に及んだのか。メディアの報道にミスリードはないのか。60分間の電話インタビューで、緒方議員が思いの丈を語り尽くした。
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―― 11月22日、議会の定例会が始まった日の出来事を振り返っていただけますか。
緒方 まず、9:55に開場5分前を告げるブザーが鳴ってから、サッと議場に入って生後7カ月の長男を抱いて所定の席に座りました。すると、議会事務局の職員があわてて駆け寄ってきて、「やめてください」と。続いて、議長や議会運営委員長も集まってきて、「いますぐ赤ちゃんを連れて議場を退出してください」と告げられました。
「私は赤ちゃんのいる議員なのでこのまま出席しますから、どうぞ始めてください」と言ったものの、「いや、これでは始められない」「とにかく外に出てください」と押し問答に。その後、議長、副議長、議会運営委員長、最大会派の団長、それから事務局の職員と私が、議長室でしばらく話をしました。先方からは「議場は神聖な場所だから」といった話がありましたが、私はこんなふうに自分の考えをお伝えしたのです。
「自分個人のためならやっていません。子育て世代の悲痛な声があって、私のもとに多く届いています。言っても言っても聞いてもらえないけれど、この声を何とか伝えたかったんです」
その上で、議員活動と子育てが両立できるようにサポートをお願いして、過去に具体的な提案もしてきたという経緯をご説明しました。
最終的には、集まった皆さんから「分かりました。議員活動と子育てを両立できるような仕組みづくりをこれからは話し合っていきましょう」とのお答えをいただけたので、その日は赤ちゃんを友人に預けて議会に出ることに同意しました。それで議場に戻って本会議に出席したという流れです。
「個人的に何とかしてください」との反応
―― 議場で押し問答をしている間、周囲の議員からは何か声をかけられましたか?
緒方 いつもより大きな怒鳴り声が聞こえたと記憶しています。言葉の内容までは聞かないようにしていましたが、基本的には冷ややかなトーンでした。
―― 市議会の事務局側とは、赤ちゃんを連れて行くことも含めて、事前にやりとりはあったのでしょうか?
緒方 第2子の妊娠がわかってから、去年の11月28日にアポイントを取って、議会の事務局長、次長、課長が同席している場で「出産してからは議員活動と子育ての両立が難しい点もあるので、これからの活動のサポートをよろしくお願いします」とお伝えしています。
具体的には、議会に赤ちゃんを連れていけるようにすること、議会場内に託児所を設けて傍聴者や来訪者、または議員が利用できるような託児スペースを確保すること、もしくは託児所の設置がすぐに難しければスタッフの確保だけでもお願いしたい、といった内容です。もっと子育て世代が議員になれる環境作りをしたいとの一念で活動してきましたので、確か2時間ぐらいでしょうか、じっくりと話をしました。でも、事務局からのお答えは、「個人でシッターを雇って、控室で見てもらうことでしょうね」という感じでした。
出産後に体調を崩して、しばらく議会に出られない時期が続いていましたが、11月に入って「出られる範囲で出ようと思います」と事務局に連絡した時にも、再び同じような提案をしました。でも、やはり「個人的に何とかしてください」というような反応だったんです。
議長にも開会日前日にお電話して、「今回から復帰します」とお伝えしました。その上で、「子育てと議員活動の両立もサポートをお願いします」と改めて申し上げました。「例えば、どんな不備があると思う?」と聞かれましたので、議会事務局に要望した内容について説明すると、「うーん、そうね。授乳はできないといけないよね」といったお返事だったことを覚えています。「明日、絶対に赤ちゃんを連れて行きます」とは言いませんでしたが、そういう希望があるという事実はお伝えしました。
地元テレビ局の取材などでも、折に触れて私の考えは発信してきたつもりです。