とにかくすべて文書にすること
――「働き方改革」が叫ばれていますが、自営業やフリーランスの場合は大変でしょうか?
上田 自営業のママからのご相談は多いですね。特に自宅で仕事をされている人は、保育指数など不利な部分もあり苦労されています。
本目 台東区は自営業が多い土地柄で、フルタイムなら会社員と同じ扱いになっています。
伊藤 新宿の場合は、自営業は1点マイナス。まったく一緒には扱われない。さらに外で自営か、うちで自営か。それによって点数が違ってきます。本来はどこで働いているかで差がつくのはおかしいのですが……。
上田 フリーランスも大変。私がお話を聞いた中にプロスポーツ選手の方がいました。東京オリンピック・パラリンピック会場予定地のスポーツショップで働きながら、ご自身でも競技に参加したり、後進の指導もしていました。また、スポーツ振興・普及活動にも携わっていて、オリンピック・パラリンピックには欠かせない人材です。ご本人はポテンシャルに気づいていませんでしたが、「すごく貢献している人だな」と。ところが、勤務時間をストレートに点数化すると低くなってしまう。この方に関しては、きちんと五輪への貢献やこれまでの実績資料をレジュメにまとめることを提案。可視化した文書と資料が功を奏してか、無事に保育園に入ることができました。
本目 いま、勤務体系が多様化していて、副業も解禁されつつあります。ただ、なかなか行政側の制度が追いついていなくて……。大学の非常勤講師の場合、複数の大学から勤務証明をもらいますが、保育園への入園申請時には講義をしている時間のみがカウントされます。タイムカードがあるわけではないので、講義の準備時間、研究時間は証明できない。港区だと、研究者も自営業と同じようにみなしてくれます。そのため、港区の事例を持ち出し、自営業としてみなしてもらったことはありました。
上田 どのように移動しているのかSuicaの履歴を出すとか、定時のあとに仕事のある企業に関してはタイムカードを出してもらいます。延長保育の枠の奪い合いにもなりますから。とにかくすべて文書にすることですね。
本目 このように審査制度も待機児童の数も自治体によって異なります。このため、保育園に入るために引っ越しをする方もいるようです。ただ、事前にきちんと制度を調べておく必要があります。(6)杉並区のように住民歴が長い方が優先される自治体もありますから(※同点の場合に、在住期間が長い方が優先)。「入りやすい」という情報が広まって、特定の自治体で待機児童が急増することもあります。わざわざ引っ越しをしたにもかかわらず待機児童になってしまったら、目も当てられません。
保育園にすべて落ちてしまったら……
――あまり想像したくないことですが、希望する保育園にすべて落ちてしまった場合、どうすればよいのでしょうか?
上田 諦めないことです。(7)仮に認可保育園に落ちても、認証や認可外の保育園を探すこと。幼稚園の預かり保育で乗り切る。あとは安心価格で見てくれるシッターさん。いずれも質の確認は必要です。また、中途での保育園の入園申請は絶対にやっておくべきです。
本目 とにかく会社は辞めないでください。今年10月から育児休業を2歳まで延長できるようになりましたので、知識を持った上で会社と交渉してください。パパとママの子連れ出勤も模索してください。
上田 絶対に就労は継続してほしいですね。子どもは一生保育園にいるわけではない。一人で抱え込まず、地域で仲間を作ることです。
伊藤 住んでいる自治体の外に目を向けるのも一つの手だと思います。例えば、中野区の人が新宿区の保育園に入ってきています。通勤先や通勤経路の保育園も選択肢に入ってきます。区外の認証保育園や認可外保育園の情報もチェックしてください。
本目 1次申請で落ちても、追加の2次申請で受かる場合もあります。可能ならば、希望保育園を増やしてください。14希望とか、15希望まで書く。
上田 もちろん保育の質は大事ですが、あまり地理的な条件などで選り好みしすぎないことですね。自転車で通える範囲ならば、すべて希望に書くべきです。
本目 新規開設園の情報も逃さないでください。また、台東区には、パートでも入れる定期利用保育もあります。墨田区にもあります。働かないと家計が成り立たないけれど、正規では雇ってくれない。本当に困った人が入れないと意味がない。そういったニーズをすくい取るためのものです。区によって制度は違うと思いますが、どんどん問い合わせていきましょう。