非常にアレな科学者と全地球凍結の謎
類書というわけではないのですが、同じくいろんなタイプのアレな科学者が出てくる本という意味では、2004年に出ていまは文庫もある『スノーボールアース 生命大進化をもたらした全地球凍結』(ガブリエル・ウォーカー・著 ハヤカワ・ノンフィクション文庫)もお薦めです。次から次へと人間的に非常にアレな科学者が出てきてああでもないこうでもないと言いながら先カンブリア紀に起きたとされる全地球凍結の謎を解き明かす壮大なノンフィクションである一方、出てくる人物が主人公格のカナダ人(かなりアレ)ポール・ホフマン教授以下みんなアレで、科学的な偉業を達成する人はたいていアレなのだなあという思いを強くするのであります。
もしも全地球凍結のところだけ知りたいぞとか地質学を学びたいということであれば、『スノーボールアース』監修の川上紳一さんによる『宇宙137億年のなかの地球史』(PHPサイエンス・ワールド新書)を、また『凍った地球 スノーボールアースと生命進化の物語』(田近英一・著 新潮選書)をお薦めしたいのであります。っていうかうちらの住んどる地球ってほんとどうなってるんだよ。
アレな人たちを社会的にうまく包摂してやる
なお、内田麻理香さんがあますところなく描ききった、17世紀以降のヨーロッパで花開く科学サロンと発見の時代が芳しい世界観は、Steamから出ているシミュレーションゲーム『プリンキピア』で追体験ができます。せっかくすごい研究をしているのに他の天才が人脈駆使して業績を横取りしていって歯噛みするロバート・ボイルとか最高です。
やっぱさあ、日本も科学技術振興しようって話なら、まずカネをつけるだけじゃなくてアレな人たちを社会的にうまく包摂してやる、余計なこと言って炎上してもみんなで「でもあいつは良い奴だから」って言ってやれる社会って大事だと思うんですよね。どんな科学者も、やはり挫折したときに穴から引っ張り出してくれる奥さんや友人がいて……というのは大事な要素なんじゃないかと思うので。
他にも「驚異の一年半」とか「奇跡の年」とか「エロス(性愛)の爆発」など、結構重要なキーワードがちりばめられている本書をぜひ楽しんでいただければと思います。