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2017/12/11

5年後にまさかの再告知

 経過は順調に見えた。しかし2014年、再度病院で告知を受けることに。

「今度は膵臓の真ん中にがんが見つかりました。膵臓、それにどうやら脾臓も取らなければいけない。手術をしたら回復しますかと問うと、これだけ臓器を取ってそのあと元気になった人は見たことがないといいます。でもまあ、なってしまったものはしかたがない。また手術を受けました。だから今は臓器が5つ、ないことになります。でも生きていられますね。仕事もできています。医師からは『不思議なことだ』と言われ続けていますが(笑)」

 5つの臓器を失ってなお元気でいられる理由として、思い当たる節はあるだろうか。

「医学的なことはわかりませんが、気づいたことはひとつ。人間、希望だけ持っていればなんとかなるのですね。希望を捨てないという気持ちのあり方。それが何より大切ですよ」

©飯本貴子

 もちろん、病前とすべてが同じというわけにはいかない。生活のペースは少し見直した。

「食事の時間を毎日、一定にしました。そして、時間をかけて食べる。以前は5分で食べるようなこともしましたが、今は1時間きっちりとります。食べたあとには、身体を休める時間も設けています。

 そうすると、いいこともありますね。本を読む時間ができました。大江健三郎や安部公房なんかを読んでいますが、前はどうもよくわからなかった作品も、この齢になってじっくり取り組むと、腑に落ちるところがたくさんあります」

©飯本貴子

 仕事面でもプラスが生じた。

「このところ、中国からの建築依頼がどんどん舞い込むのです。彼ら曰く、安藤さんは臓器を5つ取っても元気でいる、なんて縁起のいい建築家であることか、あやかりたくて仕事を頼んだとのこと。病気になってもいいことはあるものです(笑)」

 かくも前向きでいられる秘訣はどこに?

「私には建築でやりたいことがまだまだありますから、夢と希望が尽きることはありません。少なくとも、あと20年は建築家をやり続けるつもりですから」

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