インターネット交流サイトで知り合った茨城県の女子中学生と大阪市の女児を誘拐したとして、未成年者誘拐罪などに問われた栃木県小山市の無職伊藤仁士被告(37)の判決が2022年3月22日に水戸地裁であり、中島経太裁判長は「未熟さにつけ込んだ卑劣な犯行」として、被告に懲役20年を言い渡した。
当時、取材班は現地で関係者を取材。伊藤容疑者が女児を監禁していた自宅の様子や、近隣住民の証言などを得ていた。当時の記事を再公開する。(初出:2019年11月23日 年齢、肩書などは当時のまま)
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行方が分からなくなっていた大阪市住吉区の小学6年生の女児が11月23日(土)、自宅から400キロあまり離れた栃木県内で見つかった。栃木県警は小山市の伊藤仁士(ひとし)容疑者(35)を未成年者誘拐の疑いで逮捕した。
「23日午後1時半ごろ、女の子は小山市の犬塚交番に駆け込んできたそうです。自分の名前を名乗り、靴は履いておらず、スマホも所持していませんでしたが、ケガはなく、健康状態に問題はないということです。女の子は『30歳ぐらいの男の家から逃げてきた。他にも女性がいた』という趣旨の説明をしたそうです。警察は女の子がとらわれていた住宅から出てきた35歳の男の身柄を確保するとともに、一緒にいた別の少女からも話を聞いています」(社会部記者)
伊藤容疑者が女児を連れこんだのは二階建ての自宅だという。近隣住民が証言する。
「伊藤さんは、お父さんが10年以上前に事故で亡くなっており、お婆さんとお母さん、妹、弟で暮らしていました。勉強は出来る子だったと聞いていましたが、高校受験に失敗してから、挫折してしまった。その後は学校もあまり行かず、バイトなどを転々としていたようです。高校受験が転機でしたね。最近は弟さんと妹さんは家を出て、お婆さんは近くにある母屋にいて、二階建ての家は近付いていない。あの白い家には、仁士さんだけが暮らしていたと思う」
別の近隣住民は最近、ある“異変”を感じていた。
「容疑者は自転車でいつも移動していた。2~3週間前、いつもは容疑者宅の前には停まっていない自動車が2、3台、駐車されていた。白っぽいバンだったと思う」
LINEスタンプ「既読」の謎
女児がいなくなったのは11月17日。午後10時、母親が「娘がいなくなった」と大阪府警住吉署に届け出た。最後に見かけたのは同日朝7時。母親がご飯を食べさせたときだった。だが、午前11時にはすでに家にいなかったという。
「午前8時半前後、母親の携帯電話にLINEで女児からスタンプが送られていた。見た覚えがないのに”既読”になっていたため、母親は『自分の携帯を受信音で探すためスタンプを送ったのでは』と推測していた。しかし、母親が携帯にかけても出ない。一度、同級生宅に遊びに行って午後11時に帰って来たことがあるが、連絡とれないので不安になり、警察に届け出たという」(捜査関係者)
母親が届けを出した11月17日から3日で延べ170人の捜査員を投入して捜索していた。家出と事件の両面から調べていたが防犯カメラの映り込みがなく、車で連れ去られるなど明かな事件性も見られなかった。そのため、警察は今月19日に家族の了承を得て、女児の写真を公開し、情報提供を呼びかけていた。
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