フィギュアスケート・ペアの三浦璃来(20)、木原龍一(29)組が、24日、フランスで行われた世界選手権で、日本勢の過去最高成績となる銀メダルを獲得した。大人気のフィギュアスケートの中でも、日が当たることの少なかったペア。特に、その中心選手・木原の競技人生は苦難の連続だった。「週刊文春」2022年4月1日号の記事を公開する。
◆◆◆
北京五輪のフィギュアスケート団体戦でショート4位、フリー2位と銅メダルに貢献し、人気が急上昇したのが「りくりゅう」こと三浦璃来(りく)・木原龍一ペアだ。
木原29歳、三浦20歳の“年の差ペア”は、ここまで辛酸も嘗めてきた。
「ペア」ならではの苦悩
「木原は20歳でペアに転向しましたが、全日本選手権やGPシリーズの中継が満足にないなど注目度の低さを嘆いていた。日本代表の会見ではシングルの選手に質問が集中して存在を無視されたり、囲み取材でも『記事にならないから』と記者が集まらなかったりと、ペアの扱いの悪さを味わい続けてきました」(同前)
それは無理もなく、木原が別のパートナーと出場した五輪はソチが18位、平昌が21位に沈んでいた。
「団体戦でも結果を出せず、日本はメダルを逃したため、『もっと頑張れないのか』『ペアがお荷物』とファンやメディアに言われ、落ち込んでいました。『足を引っ張ってばかり。僕にはセンスがない』と責任を感じ、19年には引退する決意を固めていた」(フィギュア雑誌編集者)
当時のペアも解消し、名古屋市内のスケートリンクで監視員やリンクの整備、貸靴コーナーのアルバイトなどをしていた木原。そこに現れたのが三浦だった。
「13歳でペアに転向した三浦でしたが、ちょうど前パートナーとの関係を解消していた。そこで木原のLINEに『トライアウトしていただけませんか?』と申し込んだのです」(同前)
これが運命の出会いに。
「ツイストリフトという女性を頭上に投げて回転させる技をした瞬間、木原は『体に雷が落ちた感覚がした』、三浦は『こんなに滞空時間が長いんだ』と感じ、その瞬間、2人は一緒にやろうと決めたそうです」(同前)
19年8月にペアを結成。その相性は抜群だった。
「演技中に微笑み合ったり、演技後にハグしたりと観ているだけで楽しくなる。取材でも年齢差を感じさせず、木原が『僕が璃来ちゃんに合わせてあげている』と言うと、三浦は『龍一君が合わせているんじゃなくて、合うんだよね』とからかったりします(笑)」(同前)