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 トランプ元大統領と関係のあったポルノ女優やモデルたちから「独占インタビュー」と称して不倫話を買い取り、闇に葬ったのもナショナル・エンクワイヤラー紙である。その際も、女性たちは秘密保持契約を結ばされ、他者に口を開けば多額の賠償金を求められるとされていた。

 こうした「スキャンダルを捕えて抹殺する」手法は「キャッチ・アンド・キル」と呼ばれ、一部のメディアの常套手段となっていた。

世界的スパイ組織に狙われ…

 ハーヴェイ・ワインスタインは、性的搾取を告発した女性たちの汚点を探り出すために世界的なスパイ組織を雇っていた。それがイスラエルの元モサドによって運営されるブラックキューブという諜報組織だ。

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 盗聴、尾行はもちろんのこと、親切な第三者を装って被害女性に近づき、その人生に入り込み、汚点を探し出してはそれをネタに脅迫したり、メディアに暴露したりして、告発女性を繰り返し貶めていた。

 ワインスタイン事件を追いかけたジャーナリストたちもブラックキューブに狙われた。SNSを通じた不法侵入、位置情報の監視、親しい人たちへの粗探し。これまでにワインスタインの性的虐待を記事にしようとしたジャーナリストは監視され、身の危険を感じて途中で記事を諦めてきた。

 ローナン・ファローもまた、自宅を出て友達のアパートに身を寄せることになる。ワインスタイン報道を追いかけるジャーナリストたちは、まさに「命懸け」で調査を続けていたのである。

大手メディアの裏切り

 ハーヴェイ・ワインスタインが女性たちを性的に搾取してきたことは、業界のほとんどの人が知っていた。それが30年近くにわたって封印されてきた背景には、大手メディア自身が加害者であるという弱みを抱えていたことがある。報道機関の中でもまた、権力の座にある人間たちが圧倒的な力によって部下の女性たちに性的な関係を迫り、不当な搾取を行ってきた。

 ローナン・ファローが働いていた全米ネットワーク局NBCもまた、過去に内部告発を行った女性たちの口を封じてきた歴史があった。ワインスタイン事件をテレビが報道せず、最終的に紙媒体に持ちこまざるを得なかった理由の一端もここにある。その意味で、本書は報道機関自身が事件の加害者となってしまった時に何が起きるかを描いた本でもある。