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尹次期大統領が選挙中に掲げていた「外交公約」

 金泳三大統領は就任からひと月も経たない1993年3月に、韓国政府が元慰安婦への補償を行うと宣言した。この2年前の91年8月に故金学順氏が日本軍の慰安婦であったことを証言し、日韓で慰安婦問題が急浮上していた。慰安婦問題については1965年の「日韓基本条約」には含まれていなかった。

 金大中大統領は1998年10月、就任から8カ月後に当時の小渕首相と「日韓共同宣言 21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」を結んだ。包括的に日韓の交流を盛り込んだもので、それまで事実上禁止されていた日本の大衆文化はこの時から段階的に開放された。

 この時も韓国では、「日本の大衆文化に韓国エンタメが呑み込まれる」と今では考えられないような報道や反対する世論の声が飛び交い、それこそ大騒ぎになった。しかし、ふたを開けてみれば、知れば知るほど逆に日本への関心は冷めていき、今は韓流エンタメが世界で人気という、懸念とはまったく異なる結果をもたらした。

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 金大中大統領を尊敬すると公言する尹錫悦次期大統領が選挙中に掲げていた外交公約は、この「韓日 金大中、小渕宣言2.0時代の実現」だ。金大中、小渕宣言をさらに発展させて継承していくというものだった。

 3月28日、相星孝一駐韓日本大使と会った尹錫悦次期大統領は、「韓日関係は未来志向的に必ずや改善され、過去のような良い関係へ迅速に復元されなければならない」と対日関係改善に並々ならぬ意欲を見せた。これは文在寅大統領が誕生した時とはまったく違う姿だ。

退任後は田舎暮らしをするという文在寅大統領 ©AFLO

 人材の布陣も、日本通の専門家も見当たらず、日本にまったく関心がみられなかった文在寅政権発足当時とは異なる。

 引継委員会の外交専門委員のメンバーには、日本研究の第一人者といわれる朴喆熙ソウル大学教授が名を連ねる。朴教授は、大統領選挙中から尹錫悦次期大統領の外交ブレーンとしてキャンプ入りしていた。日本研究の専門家として知られた米コロンビア大学ジェラルド・カーチス教授を師とし、日本の政治家にも知己が多い。

 尹錫悦次期大統領は当選した翌日3月11日には米バイデン大統領に続いて、岸田文雄首相と電話会談を行っているが、「これに尽力したのも朴教授だと言われています」(別の中道紙記者)。