懸案は日本企業の資産の現金化
尹錫悦次期大統領の公約にあった「金大中、小渕宣言継承」も朴教授が説いていたものだ。今年明けのソウル大学日本研究所のレポートに、「日韓協力を再構築するためには何が必要か」という段落でこう書いている。
「謝罪と補償を通して過去史からまず解決しようという韓国も、過去史についてこれ以上の謝罪や反省はないという日本も、歴史に捕らわれている。歴史の和解は、両国の民族主義に基づいた歴史修正主義から脱して、日本は過去史を直視しようという勇気を、韓国は未来へ進む勇気を持ってこそ可能だ。金大中、小渕宣言の基本精神を発展させて継承すべき時だ」(『冠延レビュー44』より抜粋)
日韓の喫緊の懸案は、元徴用工とその家族ら原告による日本企業の資産の現金化だ。1965年の「日韓基本条約」で解決済みとする日本は「韓国が解決すべき事案」として解決の“ボール”を韓国側においてきた。
一方、韓国でも、韓国政府がまず賠償した後、日本企業が寄付金のような形式で支払うといった案が出たりしていたが実現にはつながっていない。現在は、2020年8月に発議された、「日帝強制動員および慰安婦被害者人権財団」を設立し、財団の設立資金を関連の日韓企業が寄付金、信託金のような形で出し、それを賠償金とする法案が韓国国会に係留中だ。
大統領就任式に日本が誰を特使とするかに注目
ただ、「韓国と日本の関係改善には日本の協力も必要です」と冒頭の記者は言う。やはり、日本研究者として韓国で知られる、陳昌洙世宗研究所日本研究センター長も日経新聞のインタビューでこう指摘している。
「日本政府が今後も、『韓国が提案を持ってくるべきだ』という強硬姿勢を維持するならば、尹政権が反日世論の壁にぶつかるのは必至だ。両国関係改善のためには、日本側の協力も欠かせない」(日経新聞、3月25日)
日本とて、1965年の「日韓基本条約」で解決済みだと繰り返すだけでは道理にかなわないだろう。
日韓の関係改善に意欲を見せる尹錫悦次期大統領の新政権が今もっとも注目しているのは、5月に行われる大統領就任式に日本が誰を特使とするかだという。
「日本の夏の参議院選以降に本格化する韓日交渉において徴用工問題などのさまざま問題で話し合いが持てる可能性を示すような特使を送ってくれるのかに関心が集っています」(前出記者)
その人物によって日本からのメッセージを読み取るということらしい。
「日韓共同宣言 21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」を継承するとしていることから、韓国の記者たちの間では故小渕恵三元首相の次女、小渕優子議員や茂木敏充幹事長、林芳正外務大臣らの名が挙がっているという。