文春オンライン

元徴用工問題で「資産現金化」、にじみ出る韓国新政権の“焦り”…日韓関係の「タイムリミット」が迫っているワケ

2022/04/01
note

 大統領職引継委員会も正式に立ち上がり、分刻みのスケジュールをこなしているという尹錫悦次期大統領の姿が委員会のHPに続々とアップされる。

 連日、引継委員会のスポークスマンが記者へ行う午前のブリーフィングの様子はニュース番組で生中継へ。時間は正味20分。コロナの感染者数が爆発的に増えた中でも40人ほどの記者がぎちぎちに並んで、パソコンを叩いている姿が映し出される。

 内容はその日の新大統領の日程や公約関連についてで、その後、記者たちとの質疑応答に移る。これは、青瓦台に籠もっていた朴槿恵、文在寅大統領との対比を意識したもので、国民と疎通(コミュニケーション)する新政権というイメージ作りの一環でもあるが、記者とのやりとりは見ていて面白い。

ADVERTISEMENT

 この引継委員会で際立つのが“スピード感”だ。それも、一秒でも前に進んでいることを見せなければという逼迫さにも似た“スピード感”というか。

当選した尹錫悦次期大統領。政治経験ゼロの検事総長出身だ ©getty

喫緊の課題は、戦後最悪といわれる対日関係の改善

 背景には、0.73ポイントという超僅差での辛勝により、はなから高い支持率が望めないことや、野党が300議席のうち172議席を占めるねじれ国会という苦しい状況が透けて見える。韓国の大統領の任期は再選なしの5年。政権発足間もない、まだ求心力のあるうちが“ゴールデンタイム”なのだ。

 外交も然り。喫緊に解決に動くべしと浮上しているのは、戦後最悪といわれる対日関係の改善だ。

「ただし、対日関係を改善できる時間的リミットは年内でしょう」

 東京特派員を経験した中道紙記者はこう強調する。金泳三、金大中大統領時代を例に挙げて言う。

「日本との関係が今よりは良好だったふたりの時代には、就任から1年以内に対日関係の問題解決に乗り出して実行しています。政権に勢いのある時期でなければ不可能なことでした。尹錫悦次期大統領もこの時期に韓日問題の解決に道筋をつけるべきです」