昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

苦境のライオンズへ。文化放送の名物アナが届けた“魂のメッセージ”

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/04/09

 ラジオの良さは大いなるマンネリにある。

 時間が来れば同じ音・声が聴こえてきて、その音と日常生活のリズムが無意識のうちに重なっている。それが日々の生活に安心感を与えてくれる。

 ラジオの野球中継も例にもれずそういうものだ。解説者と実況アナウンサー、聴き慣れた声に聴き慣れた球場の音。プロ野球が基本的には18時に始まる規則正しいコンテンツであるが故、野球ファンにとって18時少し前はそわそわする時間帯で、そこから3時間くらいは手に汗を握ることになる。

 我々スタッフもシーズンが始まればまさにその通りで、生放送直前のそわそわも、勝って喜ぶことも、あるいは負けに打ちひしがれることも、繰り返す日常の一部だ。

 これまで40年間、歓喜も悲哀もリスナーと共有し、日常になってきた文化放送ライオンズナイター。41年目の今年、そのライオンズナイターはまた新たな章へと突入した。

 斉藤一美アナウンサーが、スポーツに、ライオンズナイターの実況として戻ってきたのだ。

6年ぶりの実況に向けて球場入りする斉藤一美アナ。独自の資料が詰め込まれたカバンが重そう ©文化放送ライオンズナイター

西武は「12球団の序列12番目」か!?

 斉藤一美アナ。長らくライオンズナイターの看板アナウンサーとして活躍してきた、ライオンズファンにはおなじみの存在だ。松坂大輔のプロデビュー戦実況を契機に磨いてきたというスキル。「完全描写」を是とし、ときに絶叫、号泣しながらの実況スタイルは他に類を見ない。

 2016年シーズンを最後にスポーツからは遠ざかっていた斉藤アナだが、5年間の『斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI!』メインキャスターの任務を終え、2022年、6シーズンぶりにスポーツに復帰した。

 復帰後初実況となった4月1日、ZOZOマリンスタジアムでのロッテ戦。

 17時45分の放送開始、斉藤アナは何をどう語り出したのか。

 オープニングアジテーション全文を、試合に向かう選手たちの勇姿を想像しながら、噛みしめて読んでいただきたい。

「こんばんは、斉藤一美です。『稽古とは一から習い十を知り 十よりかえる元のその一』。千利休が茶人の心得を説いたこの言葉は、辻発彦監督の座右の銘でもあります。福岡から所沢へ移転し、最下位から始まり、着実にチーム力を積み上げて栄華を極め揺るぎなき黄金時代を築いたものの、その伝統は少しずつ形を変え、時の流れとともにいつの間にやらひ弱な集団となり下がり、とどのつまりが去年の最下位でした。十を知ったものが再び、一に立ち戻る時がやってきたのです。

 今、愛すべき選手たちは目いっぱい戦っています。あと137試合もつのか心配になるほどです。しかし、もはや失うものなど何もありません。12球団の序列12番目のチームに甘んじるわけにはいかないのです! 背水の陣で戦い続ける若獅子たちを、この『日本一やんちゃな野球中継』とともに後押ししてください。今夜も一緒に戦いましょう!」

 この2分の語りが圧巻だった。圧倒的な愛は、愛するが故の厳しさを内包する。

「12球団の序列12番目のチーム」の言葉に、ライオンズはこんなところにいていいチームではないのだと、怒りにも似た感情で武者震いした。

「今夜も一緒に戦いましょう」と言われ、これは単なる応援ではなく、まして仕事でもなく、ともに戦い抜く覚悟を突き付けられた思いだった。