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小林誠司が叩かれ過ぎる最大の要因を考える

 でも、小林選手が叩かれ過ぎる最大の要因は打撃ではなく、「永遠の若手感」にあるのではないかと僕はにらんでいます。爽やかなイケメンで、スリムな体型。30歳を超えても残る「若手」のイメージ。坂本勇人選手にも同様のムードを感じるのですが、そんな「若手感」は小林選手が侮られる一因になっているのではないでしょうか。

 たとえば、阿部慎之助さんなど年齢とともに「キャラ変」に成功したひとりでしょう。お立ち台での決めゼリフ「最高でーす!」も、若手時代とベテラン時代とを見比べるとテンションがまるで違うことがわかります。風貌や声質が変化したことで、いつしか阿部さんの若手感は薄れ、重鎮へと進化していきました。

 小林選手が「損するキャラ」なのに対して、圧倒的に「得するキャラ」も存在してきました。たとえば、みんな大好き・矢野謙次さん。照る日も曇る日も全力プレーを続けた矢野さんが打席に入れば、みんな胸を熱くして応援歌を口ずさむ。僕もそのひとりでした。

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 でも、ふと冷静になって思い返すと、矢野さんの守備に言葉を失った記憶はないでしょうか? 僕の脳裏にも、レフト・ラミレスさん、ライト・矢野さんによる両翼の守備に「あれ?」と思わされた記憶が残っています。でも、矢野さんが打席に入れば、みんなそんなことは忘れて応援歌を熱唱するのです。もし小林選手が同じようなミスをしていたら、大ブーイングが吹き荒れそうな気がします。

 巨人の選手でもっとも「トレード要員」の憶測記事が多いのも、小林選手でしょう。それでも、これまで多くの選手がFAの人的補償として巨人を去った歴史があるなか、小林選手は巨人に残り続けているのです。これは球団が小林選手を必要とし、プロテクトメンバーに入れ続けてきたからではないでしょうか(プロテクトから漏れ、他球団から求められなかった可能性も残りますが……、僕はそうではないと信じています)。

 2005年オフ、FA宣言した野口茂樹さんを獲得した際に、人的補償で小田幸平さんが中日に移籍したことがありました。中日監督だった落合博満さんは小田さんを高く評価したそうですが、巨人の失ったものはかなり大きかったはずです。仮に小林選手が他球団に流出してしまったら……、その損失は計り知れません。

 よく「親孝行したい時には親はなし」と言います。失ってからありがたみを感じるのでは、もう遅い。だから僕は強く訴えたいのです。

 親と小林誠司選手は、大切にしましょう!

 超一流の守備を堪能し、1本のヒットを愛でる。今までとは違った小林選手の愛し方が見つかるかもしれません。

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