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 で、その日ホークスが勝ったんです。おっちゃんには「来てくれたおかげや」と乗せられて、僕はまた味をしめた。法被も貰ったしこんな最高なことはないって浮かれ気分でした。後日談ですが、法被代はきっちり請求されましたけど(笑)。

 そんな感じで高2から応援団を始めて、高3になると「お立ち台」に上がらせてもらうようになったんです。いわゆる外野席の応援リーダーですね。各応援団でその日の担当イニングとかが決まるんですが、僕みたいな新参者は1回裏とかラッキーセブンの7回裏とかは立てない。確か中盤の5回とか6回に立たせてもらったんです。笛を吹いて「もってこーい、もってこーい、きしかわ(岸川勝也)!」とか「4回コールから」と選手名を連呼したらトランペットが始まったりとか。

 自分の指揮で外野のホークスファンのみんなが声を揃えてくれて、トランペットも始まる。なにより、自分がコールをしてるイニングで選手がヒットを打ってくれて、そして得点が入ると、それはもうメチャクチャ嬉しいわけです。元々人前に立つのは好きな性格。学園祭でも目立つし、運動会でも応援団長をしたし、剣道部でもキャプテンだった。気づいたら周りのみんなを引っ張る立場に立つことが多くて、高校ではホークスの応援団に。勝手にそんな人生なんだと運命を感じていました(笑)。

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芸人仲間とホークス観戦。中央が筆者。左はスパローズ森田、右はひでよしっと ©原口あきまさ

原口あきまさをつくってくれたのは外野観戦だった

 僕が応援団活動をしたのは北九州市民球場の時だけでした。平和台や福岡ドームの場合は、福岡市内の応援団が仕切るわけです。ただ、一度だけ応援手伝い依頼みたいなのが来て、行くチャンスがあったんです。

 だけどあの頃、お恥ずかしい話ですが、ダイエーホークスと共にのりピーを追っかけてたんです。そう、酒井法子さんが大好きで。ちょうど平和台に呼ばれた日がのりピーのコンサートの日で、しかも行けば特典で生写真が貰えた。僕、そっちを選んじゃった。応援団から話が舞い込んだのはマンモス嬉ぴかったんですけどね(笑)。結局、外野席じゃなくてコンサートで「のりピー!」って叫んで、生写真3枚を貰って小遣いでのりピー人形を買って。もう、ホークスファンには懺悔してもしきれない思い出です。

 その後、高校を卒業して上京したので、ホークスの応援団をやっていたのは高2からの2年間だけでした。短かったけど、あの2年間は本当に楽しかった。

 東京に出てからもホークスファンはずっと変わりません。大人になってこういう仕事をしていることもあり、内野のめちゃくちゃいい席に招待していただく機会も時々あります。選手の顔がはっきり分かるし、プロ野球の迫力も楽しめるし、最高に贅沢です。

 だけど、やっぱり外野の雰囲気が好きなんです。

 息子たちを連れてホークスを応援に行くときも、外野席を選びます。外野の雰囲気を味わわせてやりたい。応援の楽しさもそうですが、その応援って選手に届くんだよということも教えています。僕らの声って聞こえるの?って子供は言うけど、うちの子は少年野球をしているので「チームの何人かでも『よろしくお願いします』『ありがとうございました』って言うと相手に伝わるだろ。球場でこれだけの大人数が声を揃えるんだから、選手たちにはちゃんと届いてるんだよ」と答えています。応援が届くこと、諦めないこと、全力で頑張ること。プロ野球も外野席も学びの場ですよ。僕も外野スタンドで学ばせてもらいました。

©原口あきまさ

 芸人仲間同士でホークスの応援に行くときは、やっぱり笑いを取りにいきたくなっちゃうから、その場で即興のミニライブが始まるわけです。周りのお客さんもくすくす笑ってます。

 あと、学生の頃から外野席に行くと、すごく周りの人を見てましたね。面白いおっちゃんとかいるんです。外野で見てるのに何も喋らんな。何でかなと思ってたら、イヤホンをしてて「あ、ラジオ聴きながら見とったんや」とか。ヤジもみんなひどい言葉だったけど、そのおっちゃんの“間合い”がいいから面白いんです。人間観察をするのが習慣だった。それがまさか、将来につながるなんて思わなかったです(笑)。今の原口あきまさの基礎、基盤をつくってくれたのは外野観戦だったと思います。

 それでは、今回はこの辺で。(明石家さんまさんで)ほな、また!

(構成・田尻耕太郎)

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