相変わらず完封負けグセは治らないが、ここにきてようやく阪神打線が活発になってきた。巨人戦、ヤクルト戦と週末カード2週連続の勝ち越しで、「さあ、調子を取り戻してきたぞ!」と、ファンの精神状態も一時のどん底から急上昇だ。

 そこへ水を差すつもりはないが、それでも2週続けて2勝4敗。ようやく勝率.333ペースになったところ(トータル勝率は.200)。「未曾有の弱さ」が「よくある弱さ」になっただけだ。こんな程度の上昇でけっこう気分がよくなってしまうというのは、我ながら情けない。

 よく考えれば悲しいほど低レベルだ。

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 阪神ファンがここまで悲しみに打ちひしがれてしまった理由は、接戦で競り負けてばかりだからだ。「がんばれ勝てるぞがんばれ」と気合を入れて見ているのに、なんだかんだで最終的には僅差で負ける。これはつらい。全20敗のうち、半分の10試合が1点差負けで、7割の14試合が3点差以内の僅差負け。これは本当につらい。

悲しみ漂う裏目采配。なぜこうも「じゃないほう」を選ぶのか……

 多くの試合で、矢野監督の采配が勝ち負けのキーになった。A案かB案か、誰もが迷うような局面で、矢野監督はことごとく「じゃないほう」を選択し、失敗した。

 先発投手の「見切り時」を誤り、交代が遅れて痛恨の失点。逆にスパッと投手を代えれば大乱調で試合をぶち壊す。延長を意識しながら勝ちパターンの投手を温存すればその前に打たれ、相手打線の左右を考えてリリーフの順番を変えれば打たれた。

 攻撃や走塁でもそうだ。俊足走者が出塁しても盗塁やエンドランは狙わず無得点。大事に送りバントで進めてもあと1本が出ず無得点。思い切って強攻すれば併殺打で無得点。リードした展開で、代走や守備固めを繰り出せば、直後に逆転される。それでも反撃機を作るが打てる打者はもういない。逆に、僅差の試合展開で代走を出さなければ、内野安打性の打球でその走者がギリギリ二塁フォースアウトになる。

この際、矢野采配に「じゃないほう」を取り入れてみては?

 どうしてもそこへ戻ってしまうが、そもそも「今季限りで退任」と発表したことがもっとも大きな博打であり、もっとも大きな裏目だった。おそらく過去にも「今季で退任が既定路線」の監督はいたはずだ。でも裏目に出たときのリスクが大きすぎるため、シーズン前に発表するなどという「博打」をしなかった。今回、極端な結果が出たので、それをマネする監督は二度と現れないだろう。

 それに対する球団の対応も「じゃないほう」だった。どんな組織でもそうだが、一度辞めると言い出した責任者を引き留めたところで、いいことなんてない。それに、シーズン前発表をOKした理由も謎だ。結果としてセ界史上最大のつまずきとなった後に「最後まで指揮をとってもらう」と明言する必要はあったのか。阪神球団が先のことを約束して、うまくいったという記憶がない。

 プロ野球史に残るような悲しいスタートをやらかしたからには、矢野監督じゃない指揮官に仕切り直しをしてもらうのも、ひとつの選択肢となるのは当然だ。しかし、どうしてもそれをしないというのなら、これまでにちょいちょい見かけた、「ヘンな判断」が出ないように、データ重視の情報提供で球団をあげてバックアップしてほしい。

 矢野監督には、自分が「じゃないほう」を選びがちであるのを強く意識して、それを逆手に取るくらいの大胆さを求めたい。昨季のように優勝を争うシーズン終盤と、現在のように大借金を背負ったシーズン序盤では、判断基準も違ってくる。いい意味で開き直ってほしい。